第2話
課長との廊下での話のあと、オフィスにもどり、初めての事務作業をした。課長が親切に教えてくれるおかげで、簡単にこなすことができた。そんなこんなでもう昼休みだ。1人でご飯食べようかなと手に持つコンビニ弁当をみながら考えていると、「ねぇねぇ、新人くん一緒にご飯食べようよ。」と朝、課長との言い合いを止めてくれた、チャラそうな金髪の男性社員が誘ってくれた。「あっ、はい!ありがとうございます!」と返事をして、食堂へと向かった。
社員が少ないため、食堂も小さかった。「ねぇそんなコンビニ弁当なんかでいいの?」
「あっ、はい。大丈夫です。」
「ふーん。あっ、俺、海老名 律って言います。よろしくね。」
「はい。よろしくお願いします!」
海老名さんが頼んだカツ丼が来るまで、そんな会話をしていた。5分程度でカツ丼が机に到着した。
「朝は災難だったね。課長に絡まれるなんて。」
「い…いえ。あの時はありがとうございました。」
「いやいや。課長もなぁ、なんか関わるなってオーラが湧き出てるよねー。いい人なんだけどねー。あと、課長たぶん、君のこと好きだよ。」
「はい?」
危ない危ない。危うく、コンビニ弁当を吹き出してしまうところだった。
「え?どういうことですか?」
「いや。君も見たでしょ。課長の赤面具合。でも、部長のときは無表情で『それ、セクハラですよー』とか言ってたじゃん。」
と似ていない課長のモノマネをしながら、海老名さんはそう言った。
「いや。でも名前呼ばれるのと、容姿褒められるのじゃ、全然違いませんか?」
「いやー。僕には分かるんだ。課長から好きの波動を感じるんだ。」
だそうだ。
そんなことを言い合っていると、お互いに昼食を食べ終えてしまった。
「じゃあ、またね。課長からのラブを真剣に受け取るんだよ。」
と下手くそなウインクをしながら、去っていった。
午後からは、課長が体調を崩して、早退したらしく、帰ったので違う女性が僕のお世話をしてくれた。名前は、明智 弥生というそうだ。明智さんとは好きな漫画の話で、意気投合し、すぐに打ち解けることができた。お客さんも来たが、「新人なんだから、まずは、見てて」と1人で捌いてくれた。
そんなこんなで今日のお仕事は終わった。明日も仕事があるし、なんせ新人歓迎会とやらもあるそうなので、今日は家に帰ってゆっくり休もう。と思っていたのだが、海老名さんから2人きりで飲みに誘われた。
海老名さんの行きつけだという居酒屋に案内された。
「何名様ですかー。」
「2人です。」
海老名さんが答えると、カウンター席に案内された。
おしぼりを目の前に置かれた。こんなところに来たのは、初めてかもしれない。
「川畑くん。ビール飲める?」
「はい。飲みたいです。」
「ん。じゃあとりあえず生2つで。」
「かしこまりましたー。」
「今日は俺の奢りだ。たくさん飲めよ。」
「あ…ありがとうございます。」
ビールが来るのを待っていると先にお通しが来た。
すると、
「お前、明智さんと仲良くしてただろ。」と海老名さんが言った。
「え?まぁ。」
「それじゃだめだ。課長が嫉妬するだろ。」
「いやー。しないと思いますよ。別に僕のこと好きじゃないと思いますし。」
「好きとかじゃないんだ。あの人はな、プライドが高いんだ。自分より適任な人がいたら、機嫌悪くなっちゃうんだよ。」
そんなもんなのかなー。と思っているとビールが到着した。その後は2人でビールを飲みながら、海老名さんの恋愛武勇伝を聞かされた。
そんなこんなで海老名さんとの飲み会も終わり、タクシーでマンションまで帰った。玄関に女物の靴があったので、(またか。)と思いつつリビングに入ると、案の定、弥生がテレビゲームをしていた。実は弥生とは幼なじみで、就職先を悩んでいたところ、恋愛相談室まごころを紹介されたのだ。
「おーい。ゲームくらい自分の家でしろよ。」
と言うと、
「侑大。今良いところだから黙ってて。」
と逆ギレされてしまった。
「あ…あとなんで私がお世話してあげてるとき、他人のふりしたの。」
「いや、お前うるさいし。風呂入ってくるわ。」
「うるさいって何よ!」と怒る弥生をよそに風呂場へ直行する。今日は色んなことがあって疲れてるんだ。ゆっくり休もう。
休めないよー。ゆっくり休もうと思って、弥生は家に帰らせたが、どうしても課長のことを意識してしまう。手触っちゃった時もめっちゃ顔赤くなってたしなー。いーや考えても仕方ない。まぁ明日になったら、課長に会ったときに自分がどう思ったかで、明らかになるだろう。
や、やってしまった。一方、双葉は後悔に苛まれていた。侑大との廊下での話の後、『セクハラだよ。』とか言ってしまった自分が気持ち悪くなって、仮病を使って会社を早退してしまった。(いや、まぁ私悪くないよな?)と思うが、自分が気持ち悪いことに違いはない。(いや、でも何で。部長には普通にセクハラを指摘できるのに、も…もしかして川畑くんのこと意識してるのか双葉ー。嫌、そんなわけない。)そんなことを考えつつお風呂の水をバンバンと叩く。まぁ明日になったら、彼に会ったときに自分がどう思ったかで、明らかになるだろう。今日はいろんなことがあって疲れてるんだ。ゆっくり休もう。
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