第4話 透の秘密

透は、いつもどこか飄々としていた。

 冗談ばかり言って、深刻な話をしようとするとすぐに話題をそらす。

 けれど、その笑顔の裏に何かを隠していることは、なんとなく分かっていた。

 ある日の午後、凛は透の病室を訪ねた。カーテンの隙間から覗くと、透は窓の外をじっと見つめていた。

「透?」

 声をかけると、透はゆっくりこちらを向いた。その顔色は、いつもよりも悪かった。

「……大丈夫?」

「大丈夫だよ」

 透は笑ってみせる。でも、その笑顔がどこか儚く見えた。

「ねえ、透は、病気……治るの?」

 思い切って聞いてみた。

 透は少し驚いたような顔をしたけれど、すぐに目を伏せた。

「……どうだろうね」

 曖昧な返事。でも、その声は少し震えていた。

「……嘘つき」

「え?」

「治るなら、そんな顔しないでしょ」

 透は何も言わなかった。ただ、静かに笑った。その笑顔が、ひどく悲しく見えた。

 何かを言おうとしたけれど、言葉が出なかった。

 ただ、透がどこか遠くへ行ってしまうような気がして、怖くなった。

 ――その不安が、現実になる日が来るとは、まだ知らなかった。

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