第2話 静かな夜

病院の夜は、昼間とは違う静けさがあった。

 廊下の蛍光灯はぼんやりと光り、遠くで看護師の足音が聞こえる。規則正しい心電図の音が、どこか落ち着かせるようで、どこか不安を煽るようでもあった。

 凛は、ベッドの上で小さく息を吐く。今日はなぜか眠れなかった。

「……起きてる?」

 ふいに、隣の病室から透の声がした。

「起きてるよ」

 カーテン越しにそう返すと、透がくすっと笑う気配がした。

「俺さ、病院の夜って好きなんだよね」

「なんで?」

「なんとなく、世界に取り残された気分になるから」

 冗談めかした口調だったけれど、その言葉にはどこか寂しさが滲んでいた。

「じゃあ、私も一緒に取り残されてあげる」

 そう言ったら、透は驚いたように黙った。そして、しばらくしてから、ふっと笑う声が聞こえた。

「……変なやつ」

「そっちこそ」

 二人の間に、静かな夜が流れた。

 それは、どこか優しくて、どこか儚い時間だった。

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