第5話
俺は女帝の皮を被ることにした。商人としては願ったり叶ったりの展開だったからだ。
これからは俺が女帝としてこの国の財政を取り仕切る。こんなに心躍ることがあるだろうか。
はじめの数ヶ月は楽しくて仕方がなかった。俺の一存で国際情勢が変わる。こんな大出世があるだろうか。昔の仲間に言ったらどんなに驚かれることだろう。
俺は全てを手に入れた。豪奢な屋敷も。絢爛な調度品も。種々多様な財宝も。権力も。愛しい恋人も。
横を見れば広い寝台で絹の衣を纏った青蘭が穏やかな寝息を立てている。
この世の全てがここにあるのに。
青蘭。
その言葉は声にならずに空中に消えていった。
骨族と人間 おおつ @jurika_otsu
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