第十九章 気流心体、進化の胎動
「気流心体」と名付けられた桐人の武術は、その後も進化を続けた。桐人は、日々の鍛錬の中で、技の精度を高め、新たな応用技を開発していった。研斗もまた、桐の指導を受けながら、「気流心体」の奥義を深く理解し、自身のものとして消化していった。二人の間には、師弟関係を超えた、武の道を共に歩む同志としての絆が生まれていた。
ある日、桐人と研斗は、侠和会の神崎会長から呼び出しを受けた。
「桐人さん、研斗さん、最近、海外のマフィア組織『鉄鎖(てっさ)』が、この街に進出しようとしているという情報が入った。彼らは、非常に凶悪で、手段を選ばない連中だ。この街の平和を守るため、彼らの動きを阻止してもらいたい」
神崎会長は、深刻な表情で言った。
「会長、任せてくれ」
桐人は、力強く答えた。研斗も、決意を新たにした表情で頷いた。
桐人と研斗は、鉄鎖の情報を集めるため、街の情報屋たちと接触した。数日後、彼らは鉄鎖のアジトが、港の倉庫街にあることを突き止めた。
その夜、桐人と研斗は、倉庫街に潜入した。周囲は静かで、波の音が聞こえてくる。研斗は、桐の隣を歩きながら、緊張した面持ちで言った。
「桐人、鉄鎖は相当手強い相手だと聞いる。油断は禁物だぞ」
「ああ、分かっている。だが、恐れることはない。俺たちは、これまで培ってきた力で、必ず奴らを阻止する」
桐人は、研斗を励ますように言った。
二人は、慎重に倉庫に近づいた。中からは、複数の話し声が聞こえてくる。桐人は、研斗に合図を送り、静かに扉を開けた。
中には、数十人の鉄鎖の構成員がいた。彼らは、武器を手に、何やら話し込んでいる。桐人と研斗の姿を認めると、彼らは一斉に襲いかかってきた。
「気流心体、見せてやろう」
桐人は、研斗に声をかけ、戦いに身を投じた。
桐人は、長拳の流れるような動きで敵の間をすり抜け、合気道の技で敵の力を利用して投げ飛ばした。研斗も、桐から教わった「気流心体」の技を使い、敵の攻撃をかわし、的確に反撃していく。
桐人は、敵の攻撃を受け流しながら、体内の気を高めていった。そして、気を一気に放出し、周囲の空気を振動させた。その衝撃波は、敵を吹き飛ばし、武器を弾き飛ばすほどの威力を持っていた。
研斗は、桐人の動きを見て、自身の戦い方を変化させた。彼は、桐人の動きを模倣するのではなく、「気流心体」の理念を理解し、自身のスタイルに落とし込んでいった。研斗は、より積極的に攻撃を仕掛け、敵を翻弄していく。その動きは、以前よりもずっと洗練され、力強くなっていた。
鉄鎖の構成員たちは、桐人と研斗の圧倒的な強さに、次第に押され始めた。彼らの攻撃は、全く通用せず、次々と倒されていく。
激しい戦いの末、桐人と研斗は、鉄鎖の構成員を全員制圧することに成功した。鉄鎖の計画は阻止され、街の平和は守られた。
戦いを終え、桐人は研斗に言った。
「研斗、お前は本当に強くなった。俺の教えたことを、ただ模倣するのではなく、自分のものとして消化している。それは、武術家として、最も大切なことだ」
研斗は、照れくさそうに笑った。
「これも、桐人のおかげだよ」
桐人は、研斗の肩に手を置いた。
「これからも、一緒に武の道を歩んでいこう」
二人は、互いに頷き合った。
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