第十八章 武の融合、新たな潮流
世界各地を巡り、数多の武術を体得した桐人。その知識と経験は、彼の中で一つの確信へと変わっていた。武術とは、単なる戦闘技術ではなく、人間が持つ可能性を最大限に引き出すための手段である、と。そして、既存の武術に囚われることなく、自身の体と心、そして得てきた力に最適化された、全く新しい武術を創造することこそが、自身の進むべき道だと悟った。
桐人は、かつて修行した合気道の道場に戻り、そこで得た学びを土台に、新たな武術の構築に取り掛かった。合気道の「和の精神」、すなわち相手の力を利用し、争いを避けるという理念は、彼の武の根幹を成すものだった。そこに、長拳の流れるような動き、酔拳の変幻自在さ、ムエタイの破壊力、カポエイラの予測不能な動き、そして、体内の気を操り潜在能力を引き出す方法を融合させていった。
彼の武術は、静と動、剛と柔、そして内的エネルギーと外的エネルギーの調和を重視していた。それは、まるで自然界の摂理を体現するかのようだった。
ある日、桐人は研斗を道場に呼び出した。
「研斗、お前に俺の新しい武術を見せたい」
桐人は、真剣な表情で言った。
研斗は、桐人の言葉に興味津々だった。彼は、桐人の強さを誰よりも知っており、彼が創り出す武術がどのようなものになるのか、大いに期待していた。
桐人は、研斗を前に、自身の武術を披露し始めた。それは、研斗がこれまで見たことのない、全く新しい動きだった。流れるように動きながらも、一瞬で爆発的な力を発揮し、予測不可能な角度から攻撃を繰り出す。かと思えば、相手の力を利用し、最小限の動きで相手を制圧する。その動きは、まるで風のように捉えどころがなく、研斗は目を奪われた。
「これは…一体…」
研斗は、言葉を失っていた。
「俺が創り出した武術だ。まだ名前はない。お前はどう思う?」
桐人は、研斗に尋ねた。
「凄い…の一言だな。桐人の動きは、まるで…舞のようだ。でも、その中に、恐ろしいほどの力が秘められている」
研斗は、率直な感想を述べた。
「舞…か。それもいいかもしれないな」
桐人は、少し考え、言った。
「この武術は、気の流れ、体の動き、そして心の状態が一体となることで、真の力を発揮する。だから…『気流心体(きりゅうしんたい)』と名付けよう」
桐人は、自身の武術に名前を与えた。
その後、桐人は研斗に「気流心体」の基本を教え始めた。研斗は、持ち前のセンスと身体能力で、すぐにそのエッセンスを掴んでいった。桐人は、研斗の成長を喜びながら、彼に自身の武術を託すことを決意した。
ある日、桐人と研斗は、街で暴力団が一般市民を襲っている現場に遭遇した。暴力団は、刃物を持ち、人々を脅していた。
「研斗、行くぞ」
桐人は、研斗に声をかけ、暴力団の方へ歩き出した。
暴力団は、桐人と研斗の姿を認めると、嘲笑を浮かべた。
「なんだ、お前ら。邪魔をする気か?」
暴力団の一人が、凄んだ。
「その人たちから手を引け」
桐人は、静かに言った。
暴力団は、一斉に桐人と研斗に襲いかかってきた。桐人は、体内の気を集中させ、「気流心体」の技を繰り出した。研斗も、桐人から教わった技を使い、敵に立ち向かった。
桐人は、流れるような動きで敵の間をすり抜け、最小限の力で敵を制圧していく。研斗も、桐人の教えを守り、相手の力を利用しながら、的確に攻撃をかわしていく。二人の連携は完璧で、暴力団は全く歯が立たない。
瞬く間に、暴力団は全員制圧された。市民たちは、桐人と研斗に感謝の言葉を述べた。
この一件を通して、桐人の創り出した「気流心体」は、実戦でも通用する強力な武術であることが証明された。そして、研斗もまた、桐人の武を受け継ぐ者として、着実に成長を遂げていた。
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