第十一章 街の守護者、風鈴の絆
敵幹部を捕らえたことで、一時的に平穏を取り戻した桐人の街。しかし、その静けさは長くは続かなかった。別の街から、新たな脅威が迫りつつあった。半グレ集団「牙(きば)」の出現である。
牙は、暴力と薬物で勢力を拡大しており、桐人の街にもその魔の手を伸ばそうとしていた。彼らは、風鈴高校周辺を拠点にしようと目論み、地元の不良たちを傘下に収めようとしていた。
風鈴高校の卒業生で、桐人組の一員でもある健太から、その情報がもたらされた。
「組長、最近、風鈴の周りで見慣れない連中がうろついてるんです。どうも、他の街の半グレらしいです」
健太は、心配そうに報告した。桐人は、事態の深刻さを理解した。牙を放置すれば、街の治安は悪化し、多くの人々が危険に晒される。彼は、牙を排除することを決意した。
桐人は、健太に指示し、風鈴高校のOBたちに協力を要請した。かつて、桐人と共に風鈴をまとめ上げた彼らは、街の平和を願う気持ちは人一倍強かった。
数日後、桐人は、風鈴高校の近くの公園にいた。そこには、健太をはじめ、風鈴高校のOBたちが集まっていた。彼らは、皆、かつての不良仲間だったが、今はそれぞれの道を進んでいた。しかし、桐人の呼びかけに応じ、再び集結したのだ。
「皆、集まってくれてありがとう」
桐人は、皆を見渡しながら言った。
「今、この街に、新たな脅威が迫っている。半グレ集団『牙』だ。彼らは、この街を、風鈴を、自分たちの縄張りにしようとしている。俺たちは、それを阻止しなければならない」
桐人の言葉に、皆、真剣な表情で頷いた。
「組長、俺たちにできることがあれば、何でも言ってください!」
健太が、力強く言った。
「ああ、皆の力を借りたい。かつて、俺たちが風鈴をまとめ上げたように、今度は、この街を守ろう」
桐人の言葉に、皆の目に、再び熱いものが宿った。
その夜、桐人と風鈴のOBたちは、牙のアジトを突き止めるため、街を捜索していた。桐人は、音に意識を集中させ、敵の居場所を探っていた。
すると、ある廃墟から、複数の話し声が聞こえてきた。桐人は、その場所に近づいた。
「…風鈴の連中は、ガキばかりだ。簡単に手なずけられるだろう…」
牙のメンバーの一人が、そう話しているのが聞こえた。
「そうだな。この街を、俺たちの縄張りにしてやる…」
桐人は、確信した。ここが、牙のアジトだ。
桐人は、風鈴のOBたちに合図を送り、廃墟に突入した。中には、十数人の牙のメンバーがいた。彼らは、突然の襲撃に驚き、慌てて武器を構えた。
「何者だ!」
牙のリーダーらしき男が、叫んだ。
「この街の、守護者だ」
桐人は、静かに答えた。
そして「ものを壊す者、人を傷つける者、悪意を持ち込む者、何人たりとも例外なく風鈴が粛清する」と高らかに宣言した。
戦いが始まった。桐人は、音を頼りに、敵の攻撃をかわしていく。敵の動き、呼吸、筋肉の動き。全てが、桐人の耳に鮮明に伝わってくる。彼は、敵の攻撃を完全に予測し、最小限の動きでかわし、合気道の技を繰り出した。
風鈴のOBたちも、かつての血気盛んな戦いぶりを見せた。彼らは、連携を取りながら、敵を次々と制圧していく。
牙のメンバーは、桐人たちの圧倒的な力に、恐れをなした。彼らは、逃げ出そうとしたが、桐人たちは、彼らを逃がさなかった。
戦いの途中、桐人は、牙のリーダーと対峙した。リーダーは、ナイフを手に、桐人に襲いかかってきた。桐人は、リーダーの動きを音で完全に把握し、入身投げで投げ飛ばした。
リーダーは、地面に叩きつけられ、意識を失った。他のメンバーも、次々と倒されていった。
激しい戦いの末、桐人たちは、牙のメンバー全員を制圧することに成功した。街から、新たな脅威は排除されたのだ。
戦いを終え、桐人は、風鈴のOBたちを見渡した。彼らの顔には、達成感と誇りが溢れていた。
「皆、ありがとう。お前たちのおかげで、この街を守ることができた」
桐人は、心から感謝の言葉を述べた。
「組長、当然のことをしたまでです。俺たちはいつまでもこの街の風鈴の仲間です」
健太が、笑顔で答えた。
桐人は、風鈴のOBたちとの絆を、改めて強く感じた。彼らは、かつての不良仲間だったが、今は、街を守る、大切な仲間だった。
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