第十章 音の領域、新たな力

巨大な爆発の後、倉庫街は瓦礫と煙に覆われていた。桐人と研斗は、間一髪で爆風を避けたものの、深い傷を負っていた。敵の新たな勢力は、爆弾を使って桐人たちを抹殺しようとしたのだ。


「桐人!大丈夫か!」


研斗が、桐の肩人を支えながら叫んだ。


「ああ…なんとか…」


桐人は、意識を朦朧とさせながら答えた。爆風で耳鳴りがひどく、周囲の音がほとんど聞こえなかった。


その時、桐人の耳に、かすかな音が聞こえた。それは、瓦礫の下で何かが擦れる音だった。桐人は、その音に意識を集中した。すると、不思議なことに、他の音が消え、その音だけが鮮明に聞こえるようになった。


瓦礫の下には、敵の兵士が潜んでいた。彼は、負傷しながらも、桐たちを狙っていた。桐人は、その兵士の動きを、音だけで完全に把握した。呼吸の音、筋肉の動き、服が擦れる音。全てが、桐人の耳に鮮明に伝わってきた。


兵士が、隠れていた瓦礫から飛び出した。彼は、ナイフを手に、桐人に襲いかかってきた。しかし、桐人は、兵士の動きを完全に予測していた。彼は、兵士の攻撃を最小限の動きでかわし、合気道の技を繰り出した。


兵士は、抵抗する間もなく、地面に叩きつけられた。桐人は、音によって敵の動きを完全に把握できるようになったのだ。


「桐人…一体何が…?」


研斗は、桐の様子を見て、驚きを隠せない。


「わからない…でも、音が全て教えてくれるんだ」


桐人は、研斗にそう答えた。彼は、爆発の衝撃で、新たな能力に目覚めたのだ。


その後、桐人と研斗は、侠和会の組員たちと合流し、安全な場所に避難した。桐人は、治療を受けながら、自分の新たな能力について考えていた。


音によって相手の動きを把握する。それは、視覚に頼るよりも、はるかに正確で、詳細な情報をもたらした。桐人は、この力を使えば、これまで以上に強くなれると感じた。


数日後、桐人は、侠和会の幹部たちの前にいた。彼は、自分の新たな能力について説明した。


「私は、爆発の衝撃で、音によって相手の動きを完全に把握できるようになったのです」


桐人の説明に、幹部たちは驚きを隠せない。


「それは…信じられない力だな」


神崎会長は、感嘆の声を漏らした。


「桐人、その力を使えば、我々は敵に対して圧倒的な優位に立てる、その力を平和のために使ってくれ」


桐人は、頷いた。彼は、自分の力を、侠和会のために、そして、自分の信じる正義のために使うことを決意した。


その後、桐人は、音を頼りに、敵の情報を集め始めた。彼は、敵の会話、足音、呼吸音。あらゆる音に耳を澄ませ、敵の動きを把握した。


ある夜、桐人は、研斗と共に、敵の幹部が集まっている場所に潜入した。敵は、今後の作戦について話し合っていた。桐人は、壁越しに、彼らの会話に耳を澄ませた。


「…桐人と侠和会を、完全に潰すためには…」


敵の幹部の一人が言った。


「…新たな兵器を使うしかないだろう…」


桐は、その言葉に、警戒心を強めた。敵は、また何か危険なものを企んでいる。


その時、桐人の背後で、かすかな音がした。彼は、音に意識を集中した。それは、複数の人間が近づいてくる音だった。敵の兵士たちだ。


「研斗!来るぞ!」


桐人は、研斗に合図を送った。二人は、物陰に身を隠し、敵の様子を伺った。


敵の兵士たちは、武器を手に、周囲を警戒しながら歩いていた。桐人は、彼らの動きを、音によって完全に把握した。彼は、敵の配置、武器、そして、次に取る行動。全てが、手に取るようにわかった。


桐人は、研斗に目配せをし、同時に物陰から飛び出した。彼は、音を頼りに、敵の攻撃をかわし、合気道の技を繰り出した。


敵は、桐人の予測不可能な動きに翻弄された。桐人は、まるで、敵の動きを全て見透かしているかのように、正確に攻撃をかわし、反撃を加えた。


研斗も、桐人との連携で、敵を次々と制圧していった。二人のコンビネーションは、これまで以上に強力になっていた。


敵は、桐人たちの圧倒的な力に、恐れをなした。彼らは、逃げ出そうとしたが、桐人と研斗は、彼らを逃がさなかった。


激しい戦いの末、桐人たちは、敵の幹部たちを捕らえることに成功した。敵の新たな作戦は、未然に阻止されたのだ。

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