サジェスチョンー1

 あなたは誰ですか? 

 私の詩を百年後に読んでいるあなたは。

 このゆたかな春から、あなたにただ一本の花も贈れず、

 あの金色の雲のひとかけらもあげられません。

 ドアをあけ、外を見て下さい。

 あなたの花咲きにおう庭の中から、百年の昔に消えた花々の、

 香り高い思い出を集めて下さい。

 あなたの胸のよろこびの中に、ある春の日の朝歌われた生きるよろこびの歌が、

 百年の年月を越え、たのしげな声で送られてくるのをかんじるでしょう。

 (詩聖・タゴール)



 《プルルル……、これは、予言……?》



 遠いむかし口ずさんだ歌が どうして秋の終わりに

 何度も何度も もどってくるのか?

 遠く過ぎ去った日の旋律が ふたたび響き 真昼の空をふるわせる。

 かすかな過去のを ふたたびもどそうとこころみながら、

 影の中に消え失せたものを 非情な昼の光のなかに探し求めながら。

 葉のない冬の枝々をみすてて 鳥たちは海の彼方へ飛んでいった。

 むなしく 鳥たちは 忘れられた歌を呼びもどそうと

 自分のに帰ってゆく。

 沈んだ星のふるえる声が あの旋律のなかに聞きとれる!

 (タゴール・昔のうた)



 待望

 はてしなき空にて苦行積み給ふ 大玄神マハーカーラ目醒めざいませり。

 今もなお誰も知らざる、何処いづこにも姿をいまだあらはわさぬ、思念おもひも付かず、計り得ぬ、

 御存在おんかたの顕るを待ち望みつつ大玄神おほかみは目醒めいませり。

 風や空、世界の何処いずこにも 新しき音調しらべのいまだ目醒めぬに、

 秘密界ひめしょにては かの存在かたの歌の練習さらへは絶ゆるなく響きてゆかむ。

 しかる時 天国みくにの垣根 こはるらむ、新しき音調洪水おほみずあふづらむ、

 みみしび時代ときなる古き障壁さはかべは、水に浮きてぞ流るらむ。

 かの御存在おんかたを誰一人知りたるは無く、その御名みなを、いまだ聴きたる人は無し、

 万人もろびとはみな知らぬまま道辺みちのべに待つ 存在かたを拝むがため。

 存在かた実体まことてる霊妙ふしぎさに 触れて心は驚かむ、

 生命いのち失ひ動かざる古き覆いひも 一瞬間たちまちに壊さるるなり、

 いつの時代も かの御存在おんかたを待ち望み 大玄神マハーカーラ目醒めざいませり。

 (詩聖・タゴール)



 おお、堂々たる

 目に見えない おんみの無言の水は 絶えまなく流れている。

 が おんみの姿に 見えない動きの鼓動によっておののく。

 物の性質を持たない波が はげしく打つと 物質の泡沫がうかび出る。

 疾駆する暗さの中から 光がほとばしり

 その光は かず多くの色彩となって 分光する。

 混沌の竜巻の中で 太陽たち 月たち 星たちが気泡のように出没する。


 おお よ、おお 一所不住の遍歴者よ。

 耳には聞こえない旋律が おんみの歩調のゆえに鳴りひびく。

  を 

 おんみは絶えまなく聴いているのか?

 そのものの愛は おそるべき愛だ。そのために一所不住だ。

 はげしく愛する かなたを求めて おんみが突進すると

 おんみの胸の上で 首かざりの環が揺れて 星々を 金剛石のように撒き散らす。

 嵐に濡れている おんみの乱髪は 諸天を黒く染めながらなびき

 おんみの耳環である いなづまは 踊りながら するどく光る。

 おんみの裳裾は 波立つ穂にさわって過ぎ 

 そして うごきやめない 森の木の葉と花々は

 おんみの四季の うつわの中からつぎつぎと 雨の降りそそぐように来る。

 おんみは常に 先へと急ぐ。うしろを振り返ることはしない。

 持っている すべてのものを 両手で振り撒き

 立ち止まって拾いもせず 採り集めることもしない。

 道を進む喜びの中で おんみは おんみのすべての所得をほどこす。

 もっとも ありあまっているときに おんみは何一つをもおんみの所有としない。

 それゆえにこそ おんみは決して純粋さをなくさない。

 おんみの足にさわると 地の塵が清浄になり 

 そして死が 生のようにかがやきやめない。

 もしも おんみが疲れて 一瞬間でも立ちどまるなら

 宇宙の全存在は 空まで高く積みあがる物質のために 窒息するだろう。

 ありとあらゆる が 寄り集まって道をふさぐだろう。

 つみ重なるその重みに圧されて もっとも小さな原子が腐るだろう。

 そして宇宙の全存在の心臓を 痛みと毒の矢で 刺しつらぬくだろう。

 おお 踊っているものよ。おお 天のニンフよ。

 おお 目には見えないよ。

 おんみの踊りは モンダキニ(天の川)の流れのようだ。

 その流れは 全存在のいのちを 死に沐浴させながら 常に新しくし 

 そして 常に清める それで 諸天が 完全な清さの中で花咲く。

 おお よ! 海に取り巻かれているこの地球は

 目に見えない足どりの 絶えまない 戯れの音をひびかして

 おんみの心を休ませない。

 おんみの脈搏のひとつひとつに わたしは聞く。の足音を。

 大洋の波が踊り 森がかすかにため息をつくのは

 おんみの血潮の中であるのを 誰も知っていない。

 今日わたしは思う。

 生から生へと移りながら つねに形を変化させて 

 どんなに自分が音もなく の流れに浮かんできたかを。


 夜の中で 朝の中で わたしが受けたあらゆるものを わたしは与えた。

 ますます新しい贈りものとして ますます新しい歌にして。

 おお 聞きたまえ!

 あの流れのひびきが高まる。

 そして 小さな帆船は 流れの波に乗って上に下に揺れている。

 うしろに見のこせ。おまえが岸辺で集めたすべてのものを。

 未來からの声にしたがって 一つの流れの動きにつれて出帆せよ。

 過去の むなしい騒ぎの中から出て はかり知れない暗さの中へ 

 かぎりのない光の中に出帆せよ。

 (詩聖・タゴール)


 《プルルル……、未來王時代の到来によって、ほの暗い濁世じょくせに光芒が差し込むだろう。 シップ》


 《プルルル……、新時代は多様性が重要視される『柔軟フレキシブル時代』である。 ゲイル》



 恢復かいふくへの途上 

 よろこばしい生への招待を 早々に うけたとき、

 世界を見る新しい目が わたしに贈られた。

 あしたの光にゆあみした あの碧空が。

 古代の苦行者の 瞑想の席が。

 永劫の初めの 永遠の最初の瞬間を わたしに顕わした。

 そのとき 私は悟った。

 わたしのこの一つの誕生が つねに新しい誕生の糸でつながれていることを、

 七色の太陽の光線ひかりのように 目に見える一つの現象が 

 目には見えない多くの創造の流れを運んでいることを。

 (詩聖・タゴール)



 ギタンジャリ・103

 わが神よ、おんみへのいちずな挨拶として、願わくは、

 わたしの感覚のことごとくをひろげ、おんみの足のもとで

 この世界に触れさせてください。

 まだ降りやらぬ夕立の重みに 低く垂れこめた七月の雨雲のように、

 願わくは、わたしの心のすべてを おんみの戸口に跪かせてください。

 おんみへのいちずな挨拶として。

 願わくは、わたしのすべての歌の さまざまな旋律を一つの流れに集めて、

 沈黙の海へ流れこませてください。

 おんみへのいちずな挨拶として。

 望郷の思いにかられ 夜を日についで 

 山間の古巣へ翔びつづける鶴の群れのように、

 願わくは、わたしの全生涯を 永遠の故郷ふるさとへ向かって旅させてください。

 おんみへのいちずな挨拶として。

 (詩聖・タゴール)



 おお 同胞ほらからよ、天の在りかを 知っているか?

 天には始まりがなく 終わりがなく それは どんな国でもない。

 かずかずの前世の 善行の力によって形づくられ 

 わたしは ついに の はらの中に生まれ出た。

 それゆえに天は今 わたしの肉体の中に 

 わたしの愛となさけの中に

 わたしの心の かずかずの嘆息の中に 

 わたしのの存在の 喜びと悩みとの中に具現している。

 わたしの心の中に 天がその住家を見出し

 わたしの歌の中に 天がその旋律を見出す。

 天はわたしを 大空にあふれる喜びの中に 探し求める。

 それゆえ喇叭らっぱが 地の四方にひびいて鳴り

 に こだまを起こす。

 それゆえに花々が咲き 滝と木々の葉との中に

 よろこばしい共感のふるえがある。

 天が 母なる地の はらの中に生まれ出た

 それへのうれしい応答として

 これらのしらせのかずかずが風の中に高まる。

 (詩聖・タゴール)



 《プルルル……、未來王が願う『相応世界』を目指して、俺たちとともに進む仲間はいるかァ? クロス》


 《プルルル……、俺たちの声、俺たちからのメッセージ、聴こえてる……? イレーズ》



 せわしなく過ぎ去っていく人生の小休止に。

 詩聖・タゴールが奏でる詩歌と、世界の名曲の旋律メロディと、有智なる者たちの格言を味わい、素敵な時間をお過ごしください……。

 (ネオ・トレジャン)


 プルルル……、プルルル……、プルルル……、プルルル……、

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