第2話知らない世界

あれから三十分くらい経っただろうか。

とにかく冷静になるために歩き回った。

しかし、知ってる動物もいなければ、知ってる植物もなかった。

遠くに見える建物は、まだまだ遠い。

人は一人もいない。

ただひたすら建物に向かって歩き続けた。

さらに三十分後…。

「いや…遠!?何この遠さ!なんか距離変わってる気がしないんだけど?」

知っているものが何もないこの場所で、ただ一人叫びながら歩き続けた。

『シャァアア‼︎』

森の方から大きな鳴き声が聞こえた。

「何の音⁉︎」

音のなった方を見た。

そこには、見た事のない生き物がいた。

見た目は猫に近い…が、猫より一回り大きかった。

そして、猫より凶暴な感じだ。

『グルァアア、グァウッ!』

長い爪を立てながら左足を前にだし、僕の方に飛びかかってきた。

「うあああっ!」

最後を覚悟したが、反射だろうか。

両手で顔を覆い隠し、自分の体を守るように体を丸めていた。

「ヤーッ!」

女の人の声と同時に、目の前で何かがぶつかる音がした。

おそるおそる目を開けると、さっきまでいた猫みたいなやつの姿はなく、

見た事のないデザインの服を着た女の人が立っていた。

「大丈夫!?怪我してない?」

慌てて聞いてくる女の人。

「はっ、はい!大丈夫です。助けていただいてありがとうございます!」

初めて会う人の前では「自分を取り繕え」と教わってきたため、ついいつも通り自分を作ってしまう。

「あーいいの、いいの。怪我がなけりゃ私は怒られなくて済むから。

あっそうそう、自己紹介遅れてごめんね〜!

私は、リン・モク!この世界の人たちはみんなあのドーム内で暮らしてるの。」

そう言って俺が目指していた場所を指さてた。

「あなたずっとあれに向かってただ歩いてたでしょ?

あれねー不思議な力で、特別な腕輪してないと近づけないようになってんの。

いきなりこんなところに連れてこられてびっくりしたでしょ?

うちのボスが、色々と失敗しちゃって。

まあ私がきたからにはとりあえず、だいじょーぶよ!」

親指を立てて、笑いながらそういった。

「ありがとうございます…、

えと、一応僕も自己紹介しておきますね。

蒼野緑って言います。

今回は本当に助けていただいてありがとうございました。

ちょょっとまだ状況が飲み込めていないんですけど…。」

少し謙るように言った。

「なるほどね…。正直私に言われても困るっていうか…。

とりあえず着いてきて、としか言いようがないんだよね。

とりあえず、この腕輪つけてくれない?

そうしないとあそこに行けないから!」

また、僕の目ざいしていた場所を指差しながら言った。

「…分かりました。とりあえず、あなたのいう通りにします。

ここがどこなのかも気になりますし…。」

「話が早くて助かるわ〜。

じゃあとりあえず、あそこまでいきましょうか。」

言われた通りに腕輪をはめた俺は、リンさんに着いて行くのだった。

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