第10話
時刻は午前十時。
私はイズサと別れてカヤのいるレストランへ向かった。
そろそろ103号室のお客様に朝食を運ぶ時間だからだ。
「カヤ〜!103号室の食事お願いしまーす!」
「はーい!これだよー!」
カヤから食事を受け取り103号室に向かった。
こぼさないように慎重に進んでいく。
『コンコン』
「おはようございます。朝食をお持ちいたしました。」
「ああ。やっとかい入っておくれ。」
私は失礼しますと言って部屋の中へ入っていった。
そしてテーブルに一つ一つ丁寧に並べていく。
ゆっくりお食事をお楽しみくださいと言ってそそくさと部屋から出ていった。
今日の夜で103号室のお客様ともお別れかーなんて考えるとなんだか少し寂しく感じる。
ここのホテルで働き始めて感じた事は出会いも別れもあっという間にくるということだ。
せっかくお客様と仲良くなっても一泊だけ宿泊していくお客様が多いからすぐお別れがくる。
そしてお別れがくるたびに心にぽっかり穴が空いてしまったようななんとも言えない感覚に陥る。
それがなかなか慣れなくて苦手だったりする。
そんなことを考えながらロビーに行くとやけに嬉しそうなイズサがいた。
あの嫌だと言っていたお客様とおさらばできるのが相当嬉しいのだろう。
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