第30話

注文してお金を払い終わると空いてる席を探して座った。


「なんだよ七森もエグチかよー」

「いいだろ。別に」


僕はハンバーガーにかぶりついた。

久しぶりに食べるハンバーガーだ。初めて食べる割には美味しかった。


「そう言えば七森のとこなくなるかもしれないって噂だぞ」


空野もハンバーガーにかぶりつきながら言った。


「まじか。それは願ったり叶ったりだね。」


でも元の部署に戻れる保証はないけどなと空野は言う。

そんなの分かり切ってるさ。僕はそう答える。


「また七森と仕事したいなー」

「そうだな」


寂し気に言う空野に短く返事をする。


「転勤とかになったら俺抗議していいか」

「そんなことしなくていいよ。転勤になったら転勤になったで

現実を受け止めるさ。他県にはいきたくないけどな」


僕たちは食べながら会話を続けた。

転勤…か。

転勤になったらどこに飛ばされるかわかったもんじゃない。

もし図書館に行けなくなったら…。

間違いなく里子との繋がりが切れてしまう。

無理して日曜日だけ…いや、新しい場所が日曜休みとは限らない。

僕の手は完全に止まって一人で考え込んでいた。


「おーい。七森大丈夫か?」


空野は僕の目の前で手を左右に振りながら声をかける。


「あ、ああ」


歯切れの悪い返事。

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