第3話 自由に近づけた日
店の中はほとんどカウンターが占めていて残ったスペースに四人席が二つほど並んでいる。他にも店の奥には畳の4畳ほどの個室があるがそこは殆ど使われていなかった。
二人が座る席は特に決まってはいないがその日はカウンター席に並んで座った。
りんかが一番奥の壁側でその子がその隣に座るという感じで、その日は土曜の夜ということで賑わっていてカウンターは殆ど埋まっていた。そうするとカウンターに座っている客と話さなくてはいけなくなるのだけれど
りんかにとってそれは今日に限っては自由な振る舞いに対する反応を試せるので好都合だった。案の定客はその子に話しかけた「隣の子は友達?」その子は「あ、はい!学校が同じなんです」とりんかの方を見て来た。
いつもなら失礼のないように細心の注意を払って愛想の良い挨拶をするりんかだがその日は「どうも」とにこっとして少し頭を下げてすぐにその人から目を逸らした。
実際のところどうだったのかよくわからないがりんかにはその子が少し次の言葉に詰まっているように感じた。
そんな調子でその場を過ごしてりんかは、
これまで自分は自分以外の人を神様何かの
様に思っていたのかもしれないと思った。
しかしそれは間違いで自分が思っていたよりも大抵の人は自分勝手で幼稚なのだと。
りんかは自分より年上の人や、男に対して特にそういう勘違いをしていたのだと気づいた。これまでは自分の腹の中を全部見透かされていてきっとそれ知ったうえで自分を半ばからかいながら話してやってるのだろうと思っていたのだ。
しかし、悪意がなくとも無意識に下に見られているのは本当かもしれないが。
特に男は女を無意識に下に見ているものだとりんかは考えているのだ。
りんかはそれについて別に男を批判する訳ではなくただそれは生物学上の脳の造りや本能的なものだと考えているので、女に産まれたことを嘆いているだけだった。
そしてりんかはその日の感想としては理屈は幾ら考えても出てこなかったが感覚としてはこれまでで1番自由に近づいた気がしていた。
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