第2話 自由の理屈

もし、自由が孤独を意味するのなら私は自由になることが出来ないかも知れない。

りんかは自分が孤独に耐えられない事を思い知らされたのでそう考えた。

りんかは、しかし逆で考えたらどうだろうか、孤独イコール自由とはならないのではないかとも思った。

だって孤独な人は沢山いるけれどその人が自由かというとそうは見えない。

なんなら自分の凝り固まった偏見や理屈で人を避けている感じがする。

それならまだ私が自由になれる可能性はあるかもしれないとりんかは思い、またもや自由とは何かという漠然とした課題について考え始めることになった。

りんかには、やっと答えに辿り着いたと思えばまた違ったと言う事の繰り返しになんだか疲れて来ていた。

誰だっていつまでたっても答えの出ない事について考え続けるのは楽ではないだろう。

でもりんかにも少しばかしの変化はあった。

前に一人でいることに耐え兼ねてプライドを捨てて仲間に戻りたいと声をかけたのを

良かったかもしれないと思い始めた。

それは、一人自分の部屋に籠もって考えても、想像だけで答えは出ないと思ったからだった。

たとえそれが間違った自由の解釈だったとしても実際にやってみないとホントのところどうなのかというのが分からないのだ。

なのでりんかは人と一緒にいても自由になれるのが真の自由だと自分の中で結論づけた。

りんかはそれに気づきその5人組と一緒にいる時に試行錯誤を始めた。

例えば、皆で話しているときいつもは当たり障りない返事をしていたが敢えて逆を行った

発言をしてみたりした。

「あの子苦手だわー、なんであんな無愛想なん」と言えばりんかは「えーそうかな、あの子は別に気使ってないだけで逆に私は羨ましいけど」と言ってみたりした。

そうするとりんかはなんだか自分が言った言葉に操られるかのように本当にそんな気がしてきた。

前に何かでポジティブになるにはネガティブな言葉を使わない事、そしてポジティブな言葉を積極的に使うことが重要だと言っている

動画を見たがきっとそれとおんなじような事だろう。りんかはポジティブとか綺麗事とか

を聞くとなんだか恥ずかしくなってきて苦手だけれどこのことに続き、自分が自由に生きるために試行錯誤しながら生きているとよく聞く綺麗事の言葉どうりだと思わされる事がある。 

自由について考えていると自分らしさとか

綺麗事の代名詞みたいな言葉が浮かんでくる。

そうするともう自由に生きるとかがそもそも綺麗事なのかもしれないと思いだした。

まぁしかしりんかは自分らしさは本当に自由に生きる為には必須だとは思っていたので

その言葉を頭から取り払ってしまうことは 出来なかった。

それでも綺麗事に分類されたくないりんかは

綺麗事とは言わせない様なやり方でまた自由への試行錯誤を始めた。

それはこれまで嫌われるのが怖くてなんでも断れないでいた相手に対してもう利用なんかされてやらないぞという意味で全てのお願いを断ってやろうというものだった。

5人組の優しいあの子とは別の子とその日は夜ご飯を一緒に食べる約束だった。

りんかはその実験をする為だけに敢えて自分から遊びに誘われるように振る舞った。

りんかが思っていたよりそれはとても簡単だった。

その子と話しているときにその子が気分よくなることを言いうだけだ。

「私今何人かの男子に遊び誘われてるんだけどさ、やっぱ彼氏おるから2人っきりで遊ぶのはアウトかな」と言われて「すごいモテてるじゃん。うーんまぁ2人で遊びに行くのはやっぱ彼氏嫉妬しちゃうんじゃない」とこれだけの会話でもうりんかは釣れたと手応えを感じていた。

「やっぱそうだよね、彼氏束縛結構きついからさ」りんかはこの会話に、相変わらずだなとうんざりしていたがここで終止符を打てるのだとその気持ちで笑顔で対応した。

「あ、そういえばさりんか明日の夜空いてる?夜ご飯一緒に行かない?」

この功績は嬉しく思うべきだとは思ったが

皮肉にもどこまでも自分の想像通りだった

その子にりんかはずんと身体が重くなり冷え切っていく感じがした。 

そして翌日の夕方学校から一度それぞれの家に帰ってからりんかとその子はその子の家の近くのコンビニの前で集合した。

この子の母親は地域に愛されるこじんまりした居酒屋みたいな感じの店を一年くらい前に始めたのだけれど、りんかとその子が夕方頃遊ぶとしたら大抵その店だった。

その子は母親に似てとても美人で実際のところモテていたのだけれど、その店でもその子は美人親子という感じの立ち位置で客の男性から可愛がられていて、その店に行けばその子の友達のりんかもその恩恵を受けることができ、その日のお会計は大抵その店の客が払ってくれるのだ。

りんかはそれほどお金がある方でもないので

居心地は良いものではないが、その店がその子とのお約束の場所なのには文句はなかった。

そして二人は自転車を走らせてそのコンビニから一駅ほど離れたその店へ行くのだ。

りんかはその時間が苦手だった。

その子の声と言ったらこちらの事も気遣わずに自分が楽な声量でまるで少し大きな声の独り言みたいに喋りかけてくるので自転車で

走りながらその声を聞き取るのは難しく、

前までは「え?なんて?」とその度聞き返していたが

最近は適当に相槌を打っていた。

りんかは自由について考え始めてからそういう些細なことにも目がいく様になっていた。

本当に私はその子にとって自分が気持ち良くなるためだけの存在なのだと。

そしてしばらく自転車を走らせると例のお店につく。小さいのでそう見えるだけなのかもしれないがいつも誰かしらお客さんがいて、少なくともまぁまぁ賑わっている。

その子とその店に入るといつも客の中の誰かが声をかけてくる「おぉ!〇〇相変わらずべっぴんだな」と。

りんかはその瞬間がとても苦手だった。

きっと誰だって苦手だろう、まるで自分には目もくれないで、横にいる美人に話しかける。

しかしりんかはこれを理由にこの子の評価をしているわけでは無かった。このことでその子を悪く言ってしまうとそれは自分が美人でないから嫉妬しているという事になってしまうからだ。

そうしてその一連の客とその子の挨拶が行われている間りんかは、いつもは横でにこにことしながら会話にうんうんと頷いていたりするのだけれどその日はにこりともせず、敢えて他のところをみていたりした。 

りんかは少し気分が晴れるのを感じた。

はっきり言語化できないけれどこれがきっと

自由なんだろうと思った。

りんかはこの感覚を早急にはっきりした理屈にして言語化しなくてはならないと思ったが

どれほど頭で考えても答えは出なかった。

りんかはそれが気持ち悪くて仕方がなかった。頭の中の空洞にむずかしい言葉がぐるぐる回っていてその中心はまるで空っぽみたいだった。








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