自由への憧れ

あばらし

第1話 自由の正体

 りんかはクラスの仲良しグループでカラオケに来ていた。

 そのグループというのはりんか合わせ5人の学校のクラスでの仲良しグループで今日はそのみんなで学校帰りにカラオケに行っていたのだ。

 しかしみんなが盛り上がり気づいてはいなかったがりんかの表情は心から楽しんでいる様子ではなかった。

 りんかは手拍子はしているものの曲の歌詞など全く入ってこなかった。

 するとさっきまで歌っていた子の曲が終わり採点画面をみてその子はなにやら嬉しそうな様子でなにか言っている。

「りんか曲入れた?」

 自分の世界に入っていたりんかは急に話しかけられ少し驚いたが答えた。

「あ、ごめん入れてない。飛ばしていいよ」

 友達は「え?なんで?」と少しめんどくさそうに言う。

 りんかは歌ったほうが丸く収まると思い、

「あーいや、歌うから電目取って」と

 半ば強引に話を終わらせた。 

 りんかは本当は歌う気分では全く無かった。

 りんかは最近ある事について考え始めてからそのことに取り憑かれたかのようにそのことばかり考えるようになってしまった。

 そのこととは、結論から言うと自由についてだ。貧乏だとか、いじめられてるだとか

 友達がいないだとかそんなことはないが

 生活する上での問題のないことが幸せではないのかもしれないとりんかは考えていた。

 つまり、幸せとは心の豊かさなのだと最近確信をしていた。

 そんな重要なことに気付いたからにはと、

 りんかは早速自由になることにした。

 しかし自由とはなんだ?

 とそこで止まりっぱなしなのだ。

 だって今、困りごとなどないし好きなことをできる時間もある。

 じゃぁ好きなことをするのが自由なのではないか。りんかはこう考え早速ピアノを弾き始めた。ピアノは小さいころから習っていて得意なのだ。暇さえあれば家にいるときはピアノをずっと弾いた。りんかはそんな生活を二週間ほど続けた。りんかは考えてみた、

 自分は今自由なのかと。

 自分の好きなことをしてこれこそ自由なのではないかと。

 しかしいまいち自由になったと思えなかった。そもそも私はピアノが好きなのか?とさえ考え出した。

 よく考えるとまだ物事もよくわからないうちから姉が習っているからと言う理由で母に進められなんとなく習ってきたのを、自分はピアノの才能があるとか、自分はピアノが好きなんだとか勘違いをしてたようにも思える。

 そんな事に気づいてしまったりんかはとても悩んだ。夜布団に入ってもそればかり考えそのまま早朝まで寝れないような日が続いた。

 りんかはネットの掲示板や何でも話せる親友にこのことを聞いてみた。

 ネットの掲示板では「私達はもう自由なんです」だとか「自由とは自分のする事に責任を持つということです」とかそんな事言われてもしょうがないと思うような、りんかが求めていた回答ではなかった。

 りんかの1番の親友は「いやー、深いっすね」などと言って

 まともに答えようとしないのでなんだかりんかはこんなことを聞いたのを恥ずかしく思ってしまった。

 そもそも普通の人はみんなこんなこと考えずに生きているのか?

 私は考えずにはいられないのに。そもそもみんなはあまり深く考えようとしないのかな?

 と、相談したのに逆にもっと複雑になってしまった。

 りんかはそんな親友の言葉をきいて自分以外みんなこうなんだろうと思い、なんだか

 表面の事だけ考えていて深く考えないみんなと話すのがばかばかしくて無駄だと感じ始めた。

 するとりんかはいつも学校帰りファミレスや

 ファストフード店で仲良し5人組でだべっていたのがほとんど断るようになっていった。

 次第にはりんかはホームルームが終わるとすぐに一人でそそくさと帰るようになっていた。

 そんな事を続けていれば必然的にクラスでも孤立するわけでりんかは次第に学校に行くのが嫌になっていた。

 そこでなんとかしなくてはいけないと思ったりんかはいつものグループの1番優しい子にその子が1人のタイミングを狙って話しかけた。

「久しぶり」りんかはできる限りのプライドを捨てて話しかけた。

「おー、久しぶりだね」「最近話してなかったけど元気?」と冗談っぽくその子は言った。りんかは馬鹿にされたような気がして

 今にも帰りたかったがその気持ちを抑えて答えた。「なぁ、最近さ一緒にご飯食べる人おらんくて一緒に食べてもいいかな」

 その子は少し食い気味で「え!いいよいいよなんなら私から誘おうと思ってたから」と言った。しかしりんかは知っていた。それはここで私がまた仲間に入るのを断ったらきっと自分は性格がわるくて陰湿なやつだと思われるのが怖いからだろうと。

 しかしりんかはそんなことは承知の上で声をかけたのでそれについて悩むことはしなかった。

 そう、りんかは孤独に耐えられなかったのだ。

 そのときりんかは、もしかしたら自由とは孤独である事なのかもしれないと思った。


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