リオン王子 side
今日もいつも通りの朝だった
いつも通りに起き、軽い朝食を食べて剣術を磨く。
先日倒れた父の負担にならぬよう、執務で手一杯の2人の兄をこの剣術で支えていけるように
余計なことで煩わせることがないように
そうして丁度騎士団長との訓練を終え、剣を鞘にしまった瞬間私の目の前の景色が一変した
城の訓練所にいたはずなのに空気のニオイは土の匂いから緑の匂いとなり、目の前にはこちらを見ながら威嚇しているモンスターウルフ
何が起こった!?
思うことは色々あるが、動揺してる場合ではない
一呼吸してすぐに心を落ち着けてモンスターウルフに斬り掛かる
逃げられ仲間を呼ばれては、倒せないことはないだろうが骨が折れる
一撃で首を跳ね落とし、気休め程度かもしれないが血の匂いが少しでも薄まるように魔法でモンスターウルフの亡骸に水をかけておく
完全に目の前の事に夢中になっていた私は自分で思ってるより冷静に周りを見ることが出来ていなかったようだ
「ぁ、、あり……ます」
突然後ろから聞こえてきた声に驚いて振り返ると、そこには顔や服が血だらけになった女の子がいた
ガクガクと震えて真っ青な顔をして怯えているが、雰囲気からどうやらお礼を言ったように見える
よくよく見れば顔が怪我をしているわけではなく、中途半端に宙に浮いている右手からおびただしい血が流れ落ち痛々しい
せっかくモンスターウルフの血の匂いを薄めても、目の前の子がこうも血を流していては意味がない
すぐに近付き簡易的だが傷を洗い流し止血を試みた
私が今この場所がどこか分からないことを告げてしまった事で更に不安を煽ってしまったようで、今にも死にそうだった顔が更に絶望と染まってしまった
申し訳なく思っていたら聞こえてきた「帰りたい」の言葉
あぁ。私もだ。顔や表情には出さないように取り繕っているが、どことも分からないこんな森ではなく城に戻りたい
そう思った瞬間再び変わった目の前の景色
気付けば腕を掴んでいた彼女と共に私の部屋へと戻ってきていた
なんだ!?この力は
驚いて彼女を見つめた瞬間「やだ」と拒絶の言葉
声と共に私の体は女の子から手を離し部屋の扉のところまで吹き飛ばされてしまった
咄嗟の事で受け身も取れず、背中と頭を思いっきり強打した
まさか簡易的とはいえ治療をした相手にこんな仕打ちを受けるとは思わなかった
痛みで腹が立ち彼女の方を睨みながら見たら、私を吹き飛ばした彼女が驚愕の表情を浮かべておりそのまま気を失ってしまった
何なんだこの子は…
飛ばされた時は腹を立ててしまったが、あの表情を見る限りわざとではなかったのだろう
━━━━━━━━コンコン。
「失礼します」
私が部屋の扉に叩きつけられた音を聞きつけたようで騎士団長が駆けつけてきた
扉の前で呆然として座っていた私の姿を確認した騎士団長はすぐに片膝をついて目線を合わせると肩を掴んで揺さぶられた
「リオン殿下!いつの間にこちらに戻られたんですか。突如目の前から消えて何があったんですか」
よっぽど心配をかけたようだが、正直私も分からないことだらけだ
とりあえずあの子が逃げ出したい気持ちにならぬよう治療をして丁重にもてなし、目覚めてから詳しい事情を聞くとしよう
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