第3話
現れたその人は、私が座りこんでるのを抜きにしても大きいと思う
2mはないと思うけど…
その人は何故か「えっ!?」とか「はっ?」って声をあげてるような気がしたけど、あっという間にオオカミ(?)を剣で倒してしまった
お礼を言わないといけない場面だとは分かっているけど緊張のせいで口の中は水分を完全に失ったかのようにカラカラで上手く声が出ない
助けてはくれたけど正直敵か味方かも分からないこの状態で、まともにお礼も言えないで気分を害したと言われて斬られたらたまったもんじゃない
ガチガチと震え、喉を庇った右手からは血がダラダラと流れ、そんな見るからに弱者の女を初対面のこの人間がどうするのかなんて良くて奴隷として連れて帰るとかそんな感じだろう
使えなさそうならこの場で切り捨てか…
「ぁ、、ぁり、、ござぃ……ます」
“ありがとうございます”と、精一杯声を張り上げたつもりなのに情けないほど小さな音となったがどうやら目の前の人に届いたようだ
一瞬ビクッと反応があり、目の前の人が振り返った
身綺麗で染めたものでは無い純粋な金髪の髪に、異世界系物語の王子様のような格好をした綺麗な男だ
男は私を見て酷く困惑してるように見える
最初にオオカミ(?)を吹っ飛ばしてくれた時点で私の姿は見てるだろうし、一体何に驚いているのだろう
血だらけになった手や私の格好が見るに堪えないから?
一瞬狼狽した姿を見せた男だが、すぐに切り替えて周りを少し警戒する素振りを見せた後私に近付き片膝をついた
「こんにちは。このような怪我をしている女性に尋ねるものでは無いかもしれないがすまない。ここがどこだか分かるだろうか?あなたの手当を早急にしたいのだが…」
そう言うと男は「少し失礼する」と言って私の腕を掴み、手から魔法で水を出して私の傷を洗ってくれた
魔法あるんだ。ステータスオープンは出来なかったけど、やっぱり本当に異世界なんだ
傷が洗えるとハンカチを取り出し、傷口ではなく手首を強く縛って腕を心臓より高く上げさせられる
ドクドクと流れていた血は止血と心臓より高くあげた事で少し落ち着いたが安心したからか急激に痛みが強くなってきてツラい
男に触られて怖いと感じる暇もないほどに
しかも何故かこの人もどうやら迷子らしいし、せっかく助けが現れたと思ったのにどう受け止めたらいいの。この状況
「帰り、、たい」
怪我の治療へのお礼とかもっと他に言うことはあったはずなのに、幼子が駄々を捏ねるように思わず口に出してしまった
その瞬間景色が突然変わり、私が住んでた日本の自室ではなさそうな見るからにお金持ちの大きな部屋の一室にいた
私の腕を掴んでいた男も驚いた様子でキョロキョロと辺りを見渡し「私の部屋…」と呟いている
どうやら私が帰りたいと言ったことで男は自分の自室に私を連れてきたようだ
迷子だったんじゃないの!?
大きなベッド、男に掴まれた腕、思うように動かない私の体…これから何をされるのか想像して一気に血の気が引いた
無力な女が目の前にいたら、男のすることなんて決まってる
いくら綺麗な男だからって所詮男は男。むしろその綺麗さで上手いこと近付いて騙された女をボロボロにするんだろう
「ぃや!!」
怖い。離して。近付かないで
恐怖でいっぱいになって叫ぶと男の手は離れ、それどころか部屋の扉の方まで体が吹っ飛んだ
ドン!!!っと大きな音が響き我にかえる
━━━━━━━ぇっ、、私が吹っ飛ばした!?
驚きと混乱と恐怖がピークに達した私はそのまま気を失った
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