第2話、小さな背中
……目の前の女の子が1人、不思議そうにこちらを見ている
「あなた、名前は?」
「…星乃希愛」
「可愛い名前ね?ここら辺ではあまり居ない感じの名前だけど」
少女が顔を覗き込んでくる、
確かに可愛い名前であるが他人から言われると少し恥ずかしい
身長は150cmくらいであろうか、サラサラとした白色の髪が風にゆれている
「リアネシス」
「ん、?」
「リアネシス、私の名前、リアネって呼んで」
「よろしくね、リアネ」
……?
「なんで今自己紹介、?」
「なんでって、当分私の家で一緒に暮らせばいいと思って、」
……は、?
頭の中がパニックである、会ったばかりの女の子と一緒に住むのだ
さらに、僕は男、本当にいいのだろうか
「女の子同士だし、大丈夫でしょう?」
「僕男だけど、何を言って……」
自分の体に目を向ける、
……え、可愛い、
不覚にもそう思ってしまった、なぜなら、視界に映るそれは、まさに女の子でしか無かったからだ
というか、なんでスカートなんか、
元々女の子っぽい体つきで中性的な声で髪の毛は少し長めといったところか、だが、スカートなんて着てなかった、それだけは絶対無い
リアネはずっと首を傾げたまま、ずっと困惑の表情を浮かべている
「あっ……」
脳裏にある1つの看板が出てくる
『じょそうざい注意』
……女装剤、?
謎が解けた、除草剤じゃなくて、女装剤だったのだ
なんでだよ!と心でツッコミを入れた
「ちょっとあっち向いてて」
学校帰りだったからカバンにジャージがあるはず、
僕はせめてジャージに着替えようとした
「……え、着れない」
なんと男物のジャージが着れないのだ
まさか女装剤が切れるまでずっと……
僕は察して、顔を赤らめながらスカートを履くのであった、
終始困惑の表情のリアネに僕は状況を伝える
リアネは少し考え込んだ後
「女装させる能力なんて聞いたことないわね、」
とボソっと言った、そういえばここは能力主義の世界なのである
完全に忘れてた
「とりあえず家行くわよ」
「えっ、」
「何か言いたいことでも?」
言いたいことしかない、僕が男だと知っても尚普通に家に連れて行こうとしている、
僕はわけがわからなかった
「僕、男だよ、?」
「そんなのは知っているわ、結局可愛いんだからいいわよ」
「……可愛くないし!///」
は、?
何を言っているのかが分からない、リアネはそのまま歩いていく
「ちょっと、?リアネ?」
……反応が無くなった、
「まぁ、いっか」
僕は諦めて、ついていく
この世界で僕が上手くやっていけるのかも、生き残れるのかも分からない、
ただ、僕の目の前の小さな背中は、何故かとても大きく、安心感があった
……ふっ、
なんだかバカみたい、こんな小さな子に守られたり、女装しちゃったり、
この世界に来たのもそうだ、
今はただ笑うしかない、未来は自分で切り開いて行くものだから、
いつかは僕も自立していかなければならないだろう
それは分かっている、
ありがとな、リアネ、
……ただ今は、この目の前の小さな背中に守られる安心感に身を委ねるのであった、
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