第2話

「ああ……ヴィアンナ。やはり、崇高だよ」


 色、形、全てが私の理想通り────これが後に続く言葉。

 彼は飽きることなく毎日眺めているけど、最初に出てくる言葉が変わったことはない。

 それだけあたしのココは彼に気に入られているのだ。


 秘所を見せることに抵抗は無いか。

 残念ながらあたしにこの行為に対する羞恥心はない。

 何故なら、あたしは自分自身はだかを武器にして生きてきたから。


 別に娼婦をしていたわけじゃない。

 身体は見せても身体は売るな、それが貧困を共に生き抜いてきた母の教え。


 お前は綺麗だけど、綺麗なだけじゃスラムでは生きていけない。

 だけど自分のように身体セックスを仕事にして欲しくない。


 母があたしに教えた生き方と願い。

 それがヌードモデルだ。

 今では芸術の都と呼ばれるようになったムーサミューゼスならではの生き抜き方だった。


 しかし、母を亡くし五年が経ったけど、二十歳とはいえ女ひとりがスラムで生き抜くのはそれだけじゃ厳しかった。


 思うように稼げずその日を凌ぐことさえ難しくなっていたあたしは悩んでいた。

 これから先、あたしが生きるには本当の意味で身体を売るしかない。だけどそれは母の教え──願いを破ることになる。

 だから身体はやっぱり売りたくない。でも生きるにはこれ以上は難しい。

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