第1話

最低限の明かりだけが灯された部屋。

 揺らめくロウソクの火に照らされて壁に影が映る。


 その影は人、ふたつ。

 これから始まる、たった一人によるたった一人のための芸術鑑賞会の客と、鑑賞される芸術品の影だ。


「さあ、そこに座って脚を開いて……みせて」


 耳の奥にまで響くようなバリトンボイス。

 彼の指示に従って、いつもの定位置──真っ白な布を敷いたテーブルの上に腰を下ろす。


 その正面には彼がいる。

 愛用の肘掛け椅子に座り組んだ膝の上に手を乗せて、芸術品をじっと見守っている。


 膝下あたりまであるスカートの裾を整えることもせず、座ったテーブルの上に足を乗せた。

 もちろん靴は脱いである。

 自分用に誂えられたメイド服と揃いのニーハイソックスを履いた膝を曲げて、もう片方も同じようにする。


 重力に従ってスカートが肌の上をさらさらと滑り落ちていく。

 このままにしていたらスカートの中に隠された場所が露わになってしまう。

 だけどそれを直しはしない。

 そうすることで、何も身に着けていないそこを簡単に開いて見せられるから。


 上半身を少し後ろに傾けてあたしは堂々と見せつける。

 すると彼は開かれたあたしの花に舐めるような視線を注ぎ始める。

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