第2話普通の家族

「行ってきまーす。」

そう言って仕事に行く。

「いってらっしゃーい。気をつけてね。」

「がん…ばってね!」

こう言ってくれる家族がいる。

「おう!頑張ってくる!」

周りから見れば、ただ幸せなやつに見えるかもしれない。

でも俺はまだ26歳、子供はあと半年で4歳。

中学の時から、いろんなやつと付き合って、別れてを繰り返して…。

で大学在学中に付き合い始めた彼女と卒業後結婚。

でもすぐ妊娠しちゃって、あまり夫婦の時間ていうのも過ごせなかった。

彼女にも辛い思いさせちゃったな。

今でも思う。

ただ本当に最近の彼女は、辛そうで俺もできることはしてるつもりだけど…。

少し怒りっぽいというか…。

でもそんな感じ。

いまの会社も四年目で、新卒の子を任されて、どう指導すればいいのかわからないことも多くて、仕事を優先したい。

でも家族のことを疎かにしたくなくて…。

日々そんな葛藤の中をゆらゆらしている。

「先輩!大丈夫ですか⁉︎」

「えっ…となんだっけ?」

「もうしっかりしてくださいよ。でここの入力ってこれでいいんですか?」

「そうそう。で、この資料は違う会社のだから、こっちに打ち込んで。」

「了解です!」

仕事中なのに少しボーッとしていたみたいだ。

『パンッ』

自分の頬を強めに叩いた。

少し周りの視線が集まった。

「よしっ。」

そう呟いて、仕事を始めた。

「せーんぱい!帰りに少し飲んで帰りません?ちょっと聞きたいことがあって…。

もちろん無理にとは言わないんですけど…。」

「んー。ちょっとだけなら…まあいいぞ。その代わりちょっと相談乗ってくれ!」

正直少し疲れていたし、彼女にも申し訳ないなと思ったんだけど…。その分家事も育児も仕事も頑張ればいいかと思って少し付き合うことにした。

「やったー!さすが先輩!じゃああそこ行きません?あそこ安くて美味しいんですよ〜!」

そう言って、中に入って席の確認をしてくれた。

後輩が入った店はうちの会社で評判の店で、よく連れて行ってもらった店だ。

「二名いけますって〜!入りましょ〜。」

なぜかご機嫌な後輩に連れられ店に入った。

入ってから結構時間が経った。

「先輩時間大丈夫ですか?奥さん心配しません?」

「あっ!ほんとだ、もうこんな時間!今日は相談聞いてくれてありがとう!」

「こちらこそ、ありがとうございました!また機会があればのみいきましょう!」

そう言ってお互いに店を出た。

もちろん今回は俺の奢り。

「たっだいま〜!遅くなってごめん!晩御飯食べるよ!」

そう言って家に入った。

「しーっ。やっと寝たんだから。ふふっ、おかえり!」

そう言って、そっと頬にキスをした。

「もー、次からは気をつけるよ。色々相談に乗ったり話を聞いてもらったりしてたんだ。」

「そっか、お仕事大変だもんね!ごめんね、ちょっと昨日あまり寝れなくて…今日早めに寝るね。」

「そっか。しんどかったらいつでも言ってな。頑張ったら有給も取れるから。」

「うんありがと。晩御飯用意しとくから先サクッとお風呂入ってきたら?」

「ありがとう。そうするよ。」

2人きりで話すのはなんだか久しぶりだな。

そう思いながら服を脱いで、シャワーを浴びて、少し温くなった湯船に浸かった。

浴室から出てタオルで体を拭いて、用意されていた服に着替えた。

用意されていたご飯を食べて、寝室に行くと彼女は寝ていた。

その隣で寝てる息子の隣で、その日は眠りについた。

翌朝、

「お父さんおっきてー!」

息子の声で起きた。

「んーっ、起きたー…。」

そう言いながら顔に布団を被せる。

「こーら!また寝るでしょっ!」

そう言って布団を引っぺがされた。

「あぁー!俺の布団〜!」

そう言いながら渋々ベットから降りて朝ごはんを食べて、会社に向かった。

「行ってきます!」

いつも通り家を出て、会社で仕事をやるつもりだったのに、社長に呼び出されてしまった。

「なんかしたかなー?」

そう呟きながら、社長室へと足を向ける。

『コン、コン、コン、コン』

「失礼します!」

元気よく扉を開けた。

「お〜よくきてくれたね。まぁとりあえず座って座って。

まあ〜早速なんだがね。うちの新規プロジェクトの主任にならないか?

残業してもらうことになると思うし、責任も乗っかるし、大変だと思うけどその分手当も出るからどうかな?」

まさかの話だった。

正直、子育てで幼稚園小学校…他にも習い事とかも重なってくるだろうし、お金の心配はずっと2人でしてたけど…。

これで少しでも助けになるんだったら頑張ってみようか、でも子育ても大変だろうし…。

「まぁ、いますぐ答えを出さなくてもいい。プロジェクトメンバーは自分で選んでもらって構わない。

もし気になるようだったら、プロジェクトの資料の一部を見てもらって構わない。

それだけ、私は君に期待している。できれば今週中に片方を出してほしい。

できれば前向きな答えを待っているよ。」

そう言って社長との話は終わった。

仕事をわり、

「「お疲れ様でしたー!」」

「はー。どうすっかな。」

「どうかしたんですか?先輩。」

「あぁ、今日社長に呼び出されて…プロジェクトリーダーしないかって言われたんだけど…。どうかなって。」

「なるほど…。でも確かに先輩むっちゃ頑張ってますもんね。先輩ならいけますよ!できる範囲なら私も手伝います!」

「そう言ってくれて嬉しいよ。…そうだ!ねぇ、後輩ちゃん。

プロジェクトメンバーに入らない?わからないことはしっかり聞けるし、仕事もしっかりできてるし、良ければどう?」

「えっいいんですか!?ぜひ!私も頑張らしていただきます!」

「よしっ!そうと決まれば、今日は早く帰らないと!

しばらく帰るの遅くなるかもだし。」

「先輩!こういう時こそ、プレゼントですよ!

昨日そう出してきたばっかじゃないでうすか‼︎」

「そっか…。わかった。

ちょっと奮発して花束とケーキも買っちゃおうかな。」

「それがいいですよ。」

「ありがとう。じゃあまた明日!」

そうして、会社を後にした。

帰り道花屋さんに寄った。

「どんな花束をお探しですか?

「あっえ〜とですね…妻にサプライズで…。どんなものがいいんですかね?」

「なるほどサプライズですと、相手の好きな花とかご存じであれば。」

「いやー、花の話はしたことないですね。オレンジいろが好きとはよく言ってるんですけど。」

「なるほど、この時期ですとカランコエはいかがでしょう。

花言葉もいいですよ。」

「じゃあそれでお願いします!」

店員に言われるがまま、花束を買った。

そういえばあの人どこかで見たことがある気がいたんだけど…。

それより次はケーキだ。

近くにあるケーキ屋さんで三個分のケーキを買って、家に帰った。

「たっだいまー!今日は、ちょっとし…」

「ねぇ。どういうこと?昨日は、明日から気をつけるって言ったじゃん!

しかも昨日女の子と2人で、居酒屋に入ってるとこみたって隣の人が言ってたんだけど!?飲み会って言ってたのに、2人で飲んでたって聞いてないんだけど!」

「ごめん確かに、ちゃんと言ってなかったけど、昨日はただ…」

「言い訳の前にいうことがあるでしょ!どうせ今日もその子と飲んでたんでしょ!

私が寝かしつけて片付けをして、洗濯物畳んだりしてる時に仲良く2人で飲んでたんでしょ!?もういい!」

全然話を聞いてくれない。

確かにちゃんと言ってなかった俺も俺だけど、でも別にそんなことないしそんなつもりもないのに言われっぱなしなのは、少し腹が立った。

言い返そうとした時、

『「おじいちゃんとか、よく女の人は大切にしなさいっていうでしょ?」

「うん。」

「あれに疑問抱いたことない?」

「ある!なんでなんだろうとは、思う。」

「あれね、僕なりに考えてみたの。

男ってね田んぼに力って書くでしょ?

つまりね、男の人は昔から力仕事をしてきたの。

でもね女の人はね、くノ一って書くの。

つまり忍…。耐え忍ぶ人たちなの。

他にもねはじまるって漢字。

女に台って書くでしょ?

これはね、女の人が台になって始まるってこと。

だから男の人は女の人を支えてあげなきゃいけないんだよ。

昔の人ってすごいよね。たまたまかもしれないけどね!」』

そんな会話を思い出した。

「本当にごめん。昨日ちゃんと言えばよかった。

昨日の子は、会社の後輩のこで…仕事でわからないことがあって聞いてきてくれただけなんだ。

その代わり僕の話を聞くっていう条件でね。

でさっ!これ、いつもありがとう。言葉だけじゃなくて形にしたいと思って。

花束とケーキ。

プレゼントと何がいいとか、話聞いてもらったんだ。

これからは、ちゃんと誰とどこで飲むかしっかり言うし、直して欲しいとことかもっと言ってほしい。

できるだけ直すし、だからまだ一緒にいて!」

「えっ?ほんと?浮気じゃないの?

うそ!?私もごめん。

思い込みで、勝手なことばっか言って。

あのね、実は今日病院行ってきたの。

ちょっと吐き気とか続いてたから…。そしたらね、妊娠してたの…。」

「ほんと…?2人目⁉︎やったー!!

はぁ…。実は僕も新規プロジェクトのリーダーやってみないかって言われたんだ。

もちろん、帰るの遅くなる日も増えると思うし、お互いに大変なことも増えると思うけど、その分、手当も出るし、忙しくなる前にって、ケーキと花束。

これからもよろしく!」

「こっちこそ…よろしく!」

まさかだったけどでも嬉しいことばっかりで、もっと頑張ろうと思えた。

そして多分あの花屋の店主…世の中は狭いなぁ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る