第3話 消えた平穏と準備活動③

「部長」

「社長だ」


なぜ、俺が社長と呼ばせるかというとたんに部長になりたくないからだ。しかし、書類上は部長なので彼女が正しいが、意地というものがあるし、社長と呼ばれる方が気分がいい。


「はぁ、その呼び名に意味あるんですか?」

「あるからいったんだ」

「そうですか。なら、社長」

「なんだ?」

「返事が足りなっかたとは思いませんか?」


足りないのは彼女の言葉だとおもった。足りなかったとは過去の言動を言及している。俺は部室に来て彼女には2回返事をした。「あぁ」と冒頭の返事だ。ならばこの場合、「あぁ」の方を言及しているのだろう。


「俺におはようの挨拶を要求しているのか?」

「そうです。わかっているではないですか」

「おはようにはおはようで返すのが大切であり、日本の文化なんです」

「そうか、なら、おはよう」

「はい」


どうやら彼女は満足したみたいだ。挨拶の仕方一つでいちいち絡んでくるとは変な女だ。つかれないのだろうか。


「今日も活動はないんですか?」

「そうだが、不満か?」

「不満なら、すぐにでもやめ 」

「不満とはいっていないです」


食い気味に返事か。ちっ、この誘導ではだめか。

彼女が入部した日から俺は隙あるごとに退部を促してみているが、成功はまだしていない。


「とはいってもな、入部のときも説明したが、ここは掲げた目的とは程遠い活動しかしないぞ?」

「ボランティア活動は、部活動報告に提出するだけの必要最低限だけだ」

「もしボランティア活動に夢や内申点を求めているならやめたほうがいい」

「別にどちらももとめていないですよ」


そのどちらも求めていないだと。そんなやつがなんでこの部に入ってきたんだ?

純粋にボランティア行為が好きなやつなど高校生でいるものなのか?

いや、ない。


「そうか、しかし君はどうやら1年生で1番の成績で入ってきたそうだね、新入生代表もやっていた」

「聞くところによると、中学の時は部活動に打ち込んでいて好成績を取っていたらしいじゃないか」

「ストーカーですか?」

「面白くない冗談は言うものじゃない」

「冗談じゃないんですけど」


なおさらたちが悪い。それに何だその表情。うわーとか言いたげな顔だ。

ここは誤解を解いたほうが俺の心の精神安定上良いだろう。


「担任からきいたんだ」

「俺の部活に君みたいな優秀な人間が入ったのは少し残念だと」


彼女の表情は、無表情になった。少しこわばっていたかもしれない。


「俺もそう思う」

「担任の言うことは実に的をいている」

「君みたいな優秀な人材は今後も社会の役に立つ、夢を叶えられる、素晴らしい青春をおくれる」

「実に素晴らしいことだ」


彼女の無表情は、なんだか無表情とは言い難いものになっていた。やはり、どんな人間にも感情はあるのだろう。ここで彼女の逆鱗に触れれば、彼女は俺を、この空間を不快に思い二度と来ることはないだろう。彼女には悪いが俺は俺の平穏を優先する。


「だから、さっさとこんなよくわからない部活をやめて前の部活に専念し、文武両道を達成し自他ともに認める優等生になる方が有意義だと思うぞ」

「俺にはその価値が全くわからないが、きっと君にならわかるはずだ」

「はぁ、わかりました」


彼女はため息混じりにそういった。先程までは、怒っていたように見えたのだが、今はしょうがないという諦めのような表情だ。駄々をこねる子どもに根負けした姉のような母のような表情である。もしや、やめてくれるのかもしれないと期待に胸を膨らませる俺がいた。


「そうか。わかってくれたか」

「はい」


よし、勝った。彼女は笑顔で答えていた。その顔を見て若干俺の表情もほころぶ。

なんだ、いいやつじゃないか。人と人とはわかりあえるのだな。


「こうするしかないって、わかりました」


違和感がある発言をすると彼女はカバンから何かを取り出した。


「それは?」

「ボイスレコーダーです」


俺は無言のまま驚愕をあらわした。きっと目が普段よりも開いただろう。

そのなんのために入っているかわからないボイスレコーダーが退部届だったらどれほどよかったか。


「この部活動の目的についての社長の意見が記録されています」


このときに使われた社長は忠実に俺の指示に従ったのか皮肉なのか。

俺には後者に思えたが、実際どうなのだろう。

彼女はとても魅力的な笑顔をしていたところをみるとやはり後者なのだろう。

できれば、もっと別な発言のときに見たかった笑顔だ。

今は恐怖でしかない。


「なぜ、そんなものもっているんだ?」

「ほら、私ってとてもかわいいじゃないですか」


同意を求められても困るので無視する。だいたい事実でも自分でそこまで自信満々に言うものか?


「何かで使えるかなって思ってたんですけど、意外な使い道がありましたね」

「そうか」

「わっかた。だまるよ」


俺は両手を上げて戦う意志がないことを表す。まさかこんな自体になるとは想定外だ。彼女の目的が不明だが、非常にまずい自体だ。俺の平穏が人質にされている。1度失った信頼は元には戻せない。このままでは、新たな部活動は作れなくなる。


「これで満足かい?」


彼女は首をふることで拒否の意思を表現する。


「だめですね」

「なら、謝罪もサービスしよう」

「社長の謝罪は気持ちが欠落しているのでそれほど価値はないと思いますよ」


ひどいことを言う。たしかに俺の謝罪にはこれまで気持ちがこもったことはないが、もしかしたらこれを気にこもるかもしれないだろう。

だいたい気持ちがこもるのこもるは引き籠もるの類のものではないか?

なら俺の謝罪のほうがいくぶんか健全といえよう。


「要求は?」

「話が早いですね、社長の良いところです」


言葉や場所、関係性だけ見れば非常に喜ばしいもののはずなのに、現状嬉しいと感じないところから察するに話の流れというのはとても大切なもののようだ。


「そうですね、不定期で私がきめた活動に参加してもらいます」

「いつまで?」

「ずっとです」

「悪い冗談だな」

「冗談じゃないですよ」


こんかいも冗談じゃないみたいだ。全く悪いニュースばかりだ。つまり、これから先こいつが飽きるまで俺は遊びにつきあわされるということだ。


「なぜ、そんなことがしたいんだ?」

「優等生でいるのって結構疲れるんです」

「だから、休憩したいと思いまして」


やはりというべきかなんていうか、根っからの善人はいないのだな。

本当にいたとしたらえらく不気味だが。


「だから、この部活か」

「そのとおりです」


こんなことになるならオカルト研究部とかにするんだったな。


「なら、俺は今後はここに来ないようにする」

「なぜです?」

「そうすれば、君は休むことができ、俺は自由な時間を謳歌できる」

「なんなら、部長の座を君に譲っていもいい」

「なるほど、相互の目的が果たされてみんなハッピーと言うやつですね」

「そのとおりだ」


手応えは悪くないように思える。


「却下ですね」


そんなことはなかったらしい。なぜ、人の嫌がるであろうことをそんな笑顔で言えるのか疑問だ。俺は彼女の親の敵っだったかと真剣に記憶を探った。


「なぜだ?」

「だって1人じゃつまんないじゃないですか」

「それに、部活動はみんなでやるものですよ、社長」


まったくもって知ったことか。読書でも昼寝でも何でもやればいいだろ。

1人の時間を楽しむことができんとは、悲しい人間よ。


「なら、友達でもなんでも誘えばいいだろ」

「こう見えて私、友達いないんです」


そんなドヤ顔で言えるセリフなのだろうか。

しかし、友達がいないことには好感を持てた。


「勘違いしてるみたいなので説明しますが、クラスであぶれているとかではないですからね」

「私が才色兼備なので、高嶺の花扱いされているんです」

「困ったものです」

「腫れ物扱いだな」

「わざわざ悪い言い方をしないでください」

「まったく、失礼な人ですね」


失礼なのは認めるが、やっている非常識度で言えば彼女がぶっちぎりだ。

こんな人間の遊び相手にされては平穏とは程遠くなり、身が持たないだろう。

だから、俺はいう。


「悪いが、お断りだ」

「きみの遊びに付き合うくらいなら、美術部で適当に絵を書いていたほうがいくらかマシだ」

「遊び相手ならほかをあたれ」


やや決め顔で彼女に言ってやる。こうしてると俺も案外捨てたものじゃないと思えてくるのは自信過剰なのだろうか。

しかし、俺はこのあとの彼女の発言により要求をのむしかなくなった。男女差別をしない主義だがこればかりは男に勝ち目はないだろう。未来永劫。


「なら、あなたに乱暴されそうになったって学校にいいます」


ほんといい笑顔でいうもんだな。


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読んでくれてありがとうございます。

なんだか書いているうちに切り上げるところがわからなくて、1話、2話の3倍以上になってました。(まあ、前の2話が短すぎるんですけど)

読んでる人はわかったと思いますが文章力は皆無で語彙も乏しいです。(すまそ)

それでも読んでくれる人は、私の文章の完成度が高まるのを感じることができるはずです。はずなんです。おそらく。

これからも書いていくのでよろしくお願いします。

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