思い出の裏側

stdn0316

第1話

 実家の片付け中、古いアルバムを見つけた。

 自分の小さい頃の家族写真だ。


 家族旅行や近くの公園に遊びに行った時の写真、小学校の運動会の写真など、懐かしい写真が綴じられていた。


 一緒に片付けをしていた母と思い出を語りながらアルバムのページをめくる。

 あるページの写真が気になった。


 旅行先のホテルで撮った家族4人の写真、右上に黒いシミのようなものが写っている。

 汚れではないようだ。


 またページをめくる。シミが大きくなっている。

 3ページ目、シミが輪郭を帯びる。


 4ページ目にそれが何が分かった。

 逆さまで満面の笑みを浮かべる顔だった。


 目を見開き、限界まで口角を上げた非常に嬉しそうな表情であった。


 次のページ、また次のページの写真にも、逆さまの顔は写っていた。

 まるでこちらに気づいてもらえたのが嬉しくて仕方がないという笑顔だった。


 少し前から母の声が聞こえない。気配は後ろに感じている。

 後ろを振り向くのが怖い。あえておどけた雰囲気で話しかける。


「これ...心霊写真?まさかね〜母さん何か加工したんじゃないの?」

「加工なんかしてないよぉぉ〜」


 異常なほどの大声に思わず振り返る。


 母の顔が、あの逆さまの笑顔とすり替わっていた。

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