最終話 おひさまの味

 帰宅して鍵で開けると、すでに部屋は明るく、玄関にけんごさんの靴が置いてある。

「おかえり」

「ただいま……パーティーは?」

「飲んだくれた人たち残して帰宅しちゃった♡」

「えー!? 大丈夫なの!?」

「大丈夫だよ、父の前でニコニコ過ごすだけで疲れるんだから。ろいで充電する」

「も、もぉ。まずスーツ脱がせてよ」

「キスの先しよっか♡今すぐ♡」

 準備できたらゲストルームでと言われ頬にキスをされた。

 ゲストルームは結局ベッドになるソファを置いたぐらいで、基本立ち入りのない部屋になっている。


「おはよ、朝ごはん食パンでいい?」

「うん、おはよう」

「ろいは昨日もっとしたかった?」

「けん、ごさんは?」

「いいよ、けんで。二人だけのときはけんでいいよ」

「僕のこと幸せの味と言ってくれてたけど、僕の方こそだよ。食パンにバター塗って食べる休日ってどんな天気でも一緒にいたら大丈夫、おひさまが照らしてくれる、そんな気がしてくる」

「ろいにとっての幸せの味?」

「そうかも。焦げたパンにちゃんとしたバターって憧れだったんだ。庶民はマーガリンだよ」

「そっか、お互いのこともっと話したいし聞きたい」

 食パンを食べた口でけんごさんがキスをしてきて、お日さまが溶けたらこんな味がするかもしれない。

「有休取って、一日ゆっくり過ごさない?」

「いいね、最高」

「体をくっつけたらずっとあたたかくいられるし」

「けんは僕を味わっていられるし」

 言った先から唇を奪われる、ラブラブの朝を迎えた。


<終>

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おひさまの味 川上水穏 @kawakami_mion

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