第308話

「でもライブは行くよ。譲がステージで歌う姿って見たことなかったから」





ライトを浴びている姿を見たら元気になれる気がする。




我が儘かもしれないけど。

気持ちを引きずる余裕を持たせないほどに、眩しい姿を魅せつけてほしい。





一緒にステージに立つ一世に想いを託した。








帰り際に、二人からの餞別だと贈られたプレゼント。


包装を開けると、オールシーズン使えるカーディガンだった。


上品なグレーカラーに心を持っていかれて無意識に声が漏れた。




「わぁ、素敵」


「秋緒が選んだんだ。渚に似合うと思う」


「あっちは冷房が強くて夏でも半袖じゃキツイから。活躍すると思って」


「ありがとう。大切にする―――…」





普段の自分が気軽に買うブランドより2ランクほど上のブランドのショッパーに心が踊る。

秋緒さんが好むブランドだと思うと更に喜びが増す。


無駄を削ぎ落とした質の良いシンプルなそれは、無理して背伸びする必要はないと教えてくれているようだった。

少しずつ大人になれば良いと諭してくれるようで優しい気持ちになれた。






二人肩を並べて帰っていく後ろ姿を見送ると、空っぽの自分の隣が寂しい。




熱っぽい瞼をゆっくりと閉じて思いを馳せた。




約束したいつかの再会。

その時はきっと譲が隣に居る。




満ちた月を見上げて何度も自分にそう言い聞かせたけど。

どうしようもなく譲が恋しかった―――――。

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