第305話
思いがけず秋緒さんから連絡が来たのは、新調するスーツケースのサイズと色が決まらず店頭で兄を三十分ほど待たせていた時だった。
出発前に一緒に御飯でもとお誘いの電話。
会いたいなと思っていたんだけど誘いにくかっただけに、このタイミングの電話はかなり嬉しかった。
電話を切欠にスーツケースへの迷いも吹っ切れてサクっと決めてしまった私に、兄は本気でイラついた顔をしていた。
普段は優しいくせに、住んでるお国柄に影響されてなのか、昔とは違ってやたらせっかちになっている事に本人は気づいてないっぽい。
メッセージで送られてきた店に着くと、そこには一世もいた。
あまりにもナチュラルに二人並ぶ姿が激しくお似合いで、こっちまで嬉しくなっちゃう。
「……おまえ、何ニヤついてんの?」
遠目で二人を眺めていると、一世がさっさと座れと手招きをする。
緩んだ頬を引き戻して二人の向かい側に座ったけれど、やっぱり表情が緩んじゃう。
「なんだろうこの感じ。私にとって二人が肩並べてるのって見慣れてないはずなのに、見慣れた光景っていうか、当たり前な感じがして嬉しい」
私と居る時の一世はどこか現実味のない感じがして、無理やり居場所を探しているように見えた。
二人が一緒に居るのを見て自然という言葉がしっくりきた。
「すごーくお似合い」
ワインリストを見ながら秋緒さんはフフっと上品に笑い、一世は聞こえていないかのように水を喉に流し込んでいた。
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