第303話
慌しく過ぎる時間の中でほんの一時だけ。
To do リストから解放されて親しい人に会う時が唯一気が休まる時間だった。
まるで呪縛から解放されたように力が抜けた私を見て香澄は目を丸くしていた。
こんな感じだったけれど、本当は香澄に会うこの時間は誰と会うよりも特別で、言葉にならないほど緊張していた。
親友なのに全てを話さなかったこと。
話せないような生き方をしながら、友達面してたこと。
謝らなきゃいけない事が山ほどあって、香澄はその一つ一つに耳を傾けてくれた。
「あの時は本当にパニックでー。溺れそうなほど泣いたし、死ぬほどムカついたし。ヤバかったんだから」
「ですよね。だと思う」
「……でもさ、譲が一緒だったから。だから正気でいられたのかも。誰より取り乱してたのは譲だったよ、渚」
目を合わせて微笑むと、安心したように頷く目の前の彼女。
どうやら私達、言葉にしなくても完全に通じるようになったらしい。
「わかってるならいいけど。飼い馴らした大型犬は放しちゃだめ。寂しがって生きていけないのは目に見えてる」
「……案外逞しく成長するかもって思ってたりするんだよね」
心の奥に浮かんだ譲の姿は、太陽を真っすぐに見ているように眩しくて目を細めた。
ツンと鼻の奥が痛くて、意図せず瞳が潤んで困る。
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