第298話

「…―――そうだ。これ、譲が持ってて」






首から外された金のネックレスが目の前に差し出され、一瞬言葉も忘れて目が丸くなった。





「でもお前これっ……」





子供の頃からの宝物。

これに渚がどれだけ執着してきたか、間近で見てきた俺は痛いほど知ってる。


「ありがとう」なんて言って喜んで受け取れるもんじゃねえ。







「譲に持っていてほしいの」






渚は俺の手を取り、それを掌に乗せた。

実際より重く感じるのは渚の人生が詰まってるから。





「前に失くした時に言ってくれたよね。ネックレスも私を探すって」





自分の想い話すのが苦手な渚が、縋るように伝えようとしていた。


触れた指先は微かに震えていて。

そんな渚を心底愛しいと思った。






「俺がこれ持ってりゃ、また巡り逢えるってことだよな?

 約束なんてなくても、ネックレスが必然的に引き合わせてくれるって。お前はそう信じて俺に託すんだよな?」





背中を丸めて俯いたまま何度も頷く渚は泣いているように見えた。


包んでやろうと手を広げてみたけど、やっぱり俺には出来なかった。





「無くさず持ってるよ。大切にする」




絶対また逢えるから大丈夫。

確信しているのに言葉にしてやれない。





金色に輝くそれを掌にギュッと握りしめ。

いつかこの手で渚の胸元に戻そうと、心に誓った。

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