第293話

俺らが被ってたキャラクターの被り物達は、バックシートに仲良く重なり合い。

その周りには、渚が買い込んだ土産の入ったショッピングバッグ。


行楽帰りの幸せな風景がそこにはあった。






「仕事、抜けてきて良かったの?」


「よくは……ねえな。一世が上手くやってんだろ」


「だろうね」


「明日は入り昼だから、それまで一緒に居れるけど?」





話しても、話しても、それでもまだ足りなくて。

手が触れ合えば今にも引き寄せてしまいそうで。



それでも俺たちは平然を貫くしかなかった。





「…―――今日は家帰るよ」


「…―――だな。そっちのがいいわ」






駆け引きなんかじゃない。

ただいつもと同じように振舞いたかっただけ。


愛おしくて、甘いのに、痛いほど切ない時間だった。







今日がなければ明日も無いのは分かってた。

あるのは、"いつか" の未来だけ。


あえてそれを口にしないのは俺らの弱さだったのかもしれない。






けど本音は、遠い未来を信じる強さだと思いたい。

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