第289話
大学卒業まであと二年。
編入プランによっては三年かかるかもしれない。
その間も日本に戻りたい時は戻ればいいと、兄ちゃんが言ってたと渚は言った。
だけどきっと。卒業するまで渚は戻らない気がした。
閉園時間が近づくにつれて、人が少しずつ減っていく。
人の波が来た時と真逆に流れる光景が、俺達を現実に引き戻す。
「シンデレラになった気分」
「……お姫様ってガラかよ、冗談キツイぜ」
「だって完全に魔法解けてるじゃん」
両手に大量の買い物袋を下げて目の前を行き交う人を指して言う。
ショップが並ぶアーケードに近づくと、どこを見てもそんな光景しかなくて納得せざるを得ない。
楽しめば楽しむだけ、後からくる虚無感に対抗する術はない。
「諦めろ。現実とはこういうもんだ。俺らもそろそろ帰るか」
「……そうだね」
拗ねた子供みたいに口を膨らませる渚の手を引き、後ろ髪を引かれる思いで城に背を向けた。
このまま外へ出るつもりが、あと少しのところで渚は思い付いたように突然体の向きを変える。
どうやら魔法が解けたことを受け入れたらしい。
せっかくだから自分も買い物をするとカゴを手に息巻いていた。
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