第288話

「私だって寂しいよ…… 寂しくないわけないじゃん―――…」






体の前で肘を抱え、顔を背けて佇み、本音を口にした渚の声はパレードの音に掻き消されそうなほど小さかった。


うっすら瞳に滲んでいた涙に行き場は無くて。

受け止めてやれるのは俺だけじゃんって気づくと、感情が溢れて堪らず小さな肩を抱き寄せた。






「…―――デカい声出してごめん」






俺の感触を確かめるように、胸に顔を埋めた渚が愛おしかった。






心はついていかないけれど、頭では自分がどうしてやるべきなのか分かっていた。


渚を責めることに何の意味もないことも。




意に反してでも覚悟を決めるしかなかった。






「もう決めたんだよな?相談じゃなくて報告なんだよな?」







問いかけに渚は胸の中で何度も小さく頷き、迷いがないことを俺に知らしめた。





引き止めるまでもない。

行くなと言ったところで何も変わらない。









渚は―――… 俺が惚れた女はそういう人間だ。


それは渚以上に俺が分かってる。









その現実に苛立つし、納得なんていくはずもない。


それでも受け入れるしかないんだ。

突き放すなんて出来そうもないから……。









これ以上、お涙頂戴のやり取りはごめんだ。


寂しいと言った渚は、そんな影すら見せまいとしていた。

それが望みなら俺もとことん付き合ってやるまでだ。


最後の最後まで笑ってやろうと思った。

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