第287話
「待って。話、まだ終わってない」
話を続ける姿勢を見せた渚が、瞬時に俺の右手を捕らえる。
明確に渚が俺を追う意志を見せたのは初めてだった。
出逢ってから一度もこんなことはなかったから、どれほど意味のあることなのかも解っている。
それでも冷静になれないのは、話の内容が内容だから。
「お前さぁ!なんでっ―――、」
どうしてこんな時に限って追うんだよって。
どこまでも捻くれた考え方するしょうもない男だって知ってるくせに。
引き留める渚は相変わらず渚らしく冷静で、苛立ちを増殖させる。
渚が俺を引き留めるその行為は、今の俺にとっちゃ離れ離れになる現実を突きつける物でしかなくて。
冷静でいるなんてあり得ない状況なのに。
「お前は寂しくねーのかよ!!離れて平気なのかよ!!」
だから堪えきれず感情のままに声を張り上げていた。
両手で渚の肩を掴み、縋るように揺さぶると、渚は失望したかのように俺の手を振り払った。
「そんな冷たい人間みたいに言うのはやめて!!」
俺に向けるのはいつかと同じ瞳。
渚の寂しいのサイン。
軽蔑するような眼差しに気づいて、欠いていた理性を取り戻した。
「平気かどうかなんて行ってみなきゃ分かんないし、今出す答えじゃない」
実行もせず、想像で描いた未来に怯えながらの会話を渚は拒んだ。
そんなの臆病者のすることだと言われてる気がして痛かった。
渚は俺がそんな人間になるのを酷く嫌うだろう。
だからそれ以上は縋れなかった。
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