第269話

私を家族が待つ部屋へ案内してくれた男の人は、階級は違うけれど伯父の同期の友人だったと帰りの車の中で聞かされた。



帰り際に両親が丁重に挨拶をしているのを見て何かしらの縁があることは察していた。



子供の頃から私を可愛がってくれた伯父は今回の件で奔走したようだった。

キャリアの叔父が役職を挺して頭を下げることがどういうことなのか想像はつく。





今自分が家族と家に帰ることが出来ているのは当たり前なんかじゃない。



隠れていた背景が鮮明に透けて見えると、また違った感情が込み上げる。





何もなかったように日常に戻ることが不安だなんて、非現実的な不安に負けていた自分を引っ叩いてやりたい。




代わりに誰かが代償を払ったにすぎないのに。

そもそも何もなかったようになんてこと、あるはずがないのに。

自分の考えの浅さを恥じた。






確かに矛盾だらけだし、汚い世界だなって思う。

けれど、そんな場所で私の為に頭を下げて代償を払う人がいる。



何も出来ない自分が、不平不満を軽々しく口にすることは身勝手でしかないと悟った。



こういう世界に馴染んでしまうことに恐怖さえ感じるけど、今の私はただ受け入れることしか出来ない。









それに―――、抱いた感謝の気持ちは決して嘘じゃない。

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