第269話
私を家族が待つ部屋へ案内してくれた男の人は、階級は違うけれど伯父の同期の友人だったと帰りの車の中で聞かされた。
帰り際に両親が丁重に挨拶をしているのを見て何かしらの縁があることは察していた。
子供の頃から私を可愛がってくれた伯父は今回の件で奔走したようだった。
キャリアの叔父が役職を挺して頭を下げることがどういうことなのか想像はつく。
今自分が家族と家に帰ることが出来ているのは当たり前なんかじゃない。
隠れていた背景が鮮明に透けて見えると、また違った感情が込み上げる。
何もなかったように日常に戻ることが不安だなんて、非現実的な不安に負けていた自分を引っ叩いてやりたい。
代わりに誰かが代償を払ったにすぎないのに。
そもそも何もなかったようになんてこと、あるはずがないのに。
自分の考えの浅さを恥じた。
確かに矛盾だらけだし、汚い世界だなって思う。
けれど、そんな場所で私の為に頭を下げて代償を払う人がいる。
何も出来ない自分が、不平不満を軽々しく口にすることは身勝手でしかないと悟った。
こういう世界に馴染んでしまうことに恐怖さえ感じるけど、今の私はただ受け入れることしか出来ない。
それに―――、抱いた感謝の気持ちは決して嘘じゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます