第241話
「―――けんな…っ…」
「は?」
「っふざけんなって言ってんだよ!勝手なこと言いやがって!!」
一世は黙っていたけど刑事を睨みつけていた。
香澄の涙が止まる気配もない。
渡瀬さんは一度も見せたことないような険しい表情を浮かべている。
渚を想う気持ちは皆同じような気がした。
刑事は目をまん丸にして俺を見下ろしていた。
人、物、風景。
全ての物の時間が止まっているように見えた。
その中で自分だけが唯一感情を吐露する。
我慢出来なかったんだ―――――…。
「渚の何を知ってるっつーんだよっ!」
グッと足に力を入れて背を伸ばし、刑事とぶつかる寸前まで身体を競り寄せると勢いに負けたオッサンは一歩身体を引く。
渚を想うと自分をコントロール出来なかった。
他人にあいつを悪く言われるのが我慢ならなかった。
「あいつはなぁ!何も望んじゃいなかったよ!俺やお前らみたいに欲にまみれた生き方してなかったよ!!
この街に居る誰よりも純粋で優しい人間だったんだ!!」
俺の知ってる誰よりも綺麗だった。
他人と比べる必要もないくらい透明だった。
俺の知ってるあいつは。
俺の女は、そういう人間だった。
「上手くこの街で泳ぎたいって――っ… 溺れたくねぇって。こんな街で必死に居場所作ろうとしてたんだよ!!」
行動が心に伴わない事なんて誰にでもある。
ただこんな街に溺れたくないと必死で泳ぎ続けていただけなんだ。
だから……
だから苦しんでたんだろ、渚。
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