第234話

「アイツが何したって言うんだよ!!」




表情一つ変えず、手を前に広げてゆく手を阻む刑事。

渚との距離を縮めることすら許されず、更に増す苛立って完全に自分を見失っていた。




「どけよ――っ… 助けてやらねぇと…溺れちまうだろっ――…」


「落ち着きなさい」


「―――んでっ…!話したいだけだってっ……」


「無理なんだよ」


「どけよオラッ!邪魔すんなっ!」




何を言っても追いかけることは許されなかった。


制止させる為だったはずの手は、いつの間にか俺を捕らえるように変わっていて。



身動き一つ取ることも許されず、体当たりで応戦しようとした俺の正気のなさに危機を感じた一世、ミノブ、渡瀬さんの三人が慌てて間に入って俺の体を抑止した。





「お前ら全員ぶっ殺してやるっ…… 何なんだよっ―― 味方じゃねえのかよっ、訳分かんねぇよ――っ…!!」




背後で香澄が泣きじゃくるように声を上げていた。

悲壮感漂う泣き声が状況の悪さを知らしめる。



耳に残る音を掻き消すように髪を掻き毟り、言葉にならない想いを空に向かって叫び放った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る