第235話

どうにもならないのだと頭では理解しているのに止められなかった。


皆の隙をついて目の前に立ちはだかっていた男の胸元を目掛けて掴みかかった瞬間、背後から強い力で雁字搦めにされた。





「――バカ野郎っ… 譲!やめろ!!」





脇の下から手を回し、首元にも容赦なく手が回っていて、文字通り体を張って俺を止めたのは一世だった。


ミノブも加勢して、引きずるように刑事から引き離された。






「そんなお前見たくねーから!だから渚は俺にお前を頼むって言ったんだよ!!」





しかりつけるような厳しい表情と、不思議なほど動揺を見せない冷静な瞳。


俺にはどうしても理解できなくて力なく首を横に振るだけだった。




渚を乗せた車は走り去り、残ったのは鮮烈なあの瞬間を切り取ったような記憶だけ。


やがてそれさえも朝の街に静かに溶け込み始め、夢なのか現実なのかさえ分からなくなった。





「渚の気持ち、汲んでやってくれ」





体中の血液が頭のてっぺんから下に向かっていくような感覚に耐え切れず、その場にうずくまる。





何も分からない。



ただ、漠然と失くした半身を探し求める日々を想うと、絶望しか心に残らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る