第60話

逮捕状が出て数週間。

金田が飛んでから確実に時が過ぎていた。



警察もバカじゃない。

大した後ろ盾のない人間が捕まるのは時間の問題だと思う。



全てを頭の中で冷静に見ていたけど、唯一自分のことは見えていなかった。


このまま何もなく時が過ぎていけばいいのにと願い。

錯覚した現実の中で生きていた。



だけどそんなのは都合のいい願いに過ぎなくて。

向き合わなきゃいけない現実は確実に迫っていたんだと思う。




ASHのライブリハーサルが始まったらしく、譲は家にいる時間が少なくなっていた。



ツアーに向けての体作りを称してジムに入り浸ることも多くなっていたし、宣伝をかねた仕事も多いと言っていた。


時間が空いたとかけてくる電話でさえも深夜が多くて、声には疲れが見えていてガラにもなく心配してる自分がいたりして。



無理にでも時間を作って会おうとする譲を言いくるめて家に帰らせたり。

らしくなく譲を労わっている自分に慣れなくて正直気持ち悪かった。




一緒に居てもソファに座っているだけで譲の瞼は自然と閉じ、15分もしないうちに寝息が耳に届く。

それを確認してから私は譲に寄り添い目を閉じる。




意識のない夢の中の時間。

その時だけは心が安らいだ。




上手く言葉では表現出来ないけれど。


限られた時間の中で共に朝を迎える。

僅か数時間だったとしても、私にとっても譲にとっても必要な時だったんだと思う。



話さなくても。キスしなくても。抱き合わなくても。

私達には意味のある時間だった。

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