第52話

腹にあったもんを全部吐き出し尽くしたのか、渚は深く長い息を吐き出し、前のめりになっていた身体も再びソファに落ち着く。


そして渚が聞く姿勢になるのを待っていたかのように兄ちゃんが閉ざしていた口を開く。




「話すよ。家を出てからのこと全部」




語られる一言一言を聞き逃すまいと、瞬きするのも忘れて真剣に耳を傾ける渚。

俺も他人事とは思えなくて、パズルを組み合わせようと耳を傾けた。




家を出てからの渚の兄ちゃんは友達の家に転がり込んで、バイトしながら必死に金溜めて。

二十歳になるのを待って奨学金制度を利用して香港の大学へ進学。

そこで知り合った中国人留学生と意気投合して、在学中に電子部品を扱う会社を立ち上げたらしい。



卒業後も日本には戻らず香港で生活していた。


事業もスマホヒットに乗っかって安定した仕事を手に入れて、香港、日本、中国を行ったり来たりの日々。

東京への出張の時は決まってこのホテルに泊まっていたらしい。


だから渚が会ったドアマンの人も覚えていたんだろう。




「親にも最低限の連絡はいれてたよ。俺が渚には言わないように口止めしてた」



それを聞いた渚はショックを受けてテンションだだ下がり。

救いようがないほど雰囲気が悪かった。


それでも話は続き、渚はそれを黙って聞いていた。

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