第51話

「こんなのしか無いけど」



そう言って兄ちゃんから手渡された缶コーヒー二つ。


受け取ってそのうちの一つを渚へ手渡した。



「お兄ちゃん聞いてもいい?」




兄ちゃんが向かい合うソファに腰掛けたタイミングを計ったように、渚が戸惑いながら口を開いた。



それを合図にまた溢れ出す渚の想い。



「今どこに住んでるの?何してるの?ずっと何処にいたの?どうして連絡くれなかったの?どうして会いに来てくれなかったの?」



答える隙も与えずに湧き出す質問の数々。

勢いづいた質問は合致する答えが見つからずシャボン玉のように宙を舞うばかり。




二人の間には空白の六年間。


その間、渚がどれだけ寂しい思いをして、不安を抱えた夜を迎えたのか。

気持ちを考えると渚が詰め寄るのも無理ないと思った。





責めてる訳じゃない。

知ることで空白の時間を埋めたい。

単純にそれだけなんだと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る