第50話

「入って」




部屋のロックが解除される音と共に部屋の中に導かれて、俺と渚は中へ一歩進める。




一人で泊まるには贅沢な部屋。

乗ってたリモといい、普通会社員レべルじゃないと思う。


一体何をやってるのかと無駄に疑惑がめぐる。



お嬢の渚は全く引っかかった様子はなかったけど、兄ちゃんは俺の驚いた様子を察したらしい。



「今回は取引先の新作発表会に招待されて先方が部屋も車も用意してくれたからこうだけど、いつもこういう生活をしてるわけじゃないよ」



ネクタイを弛めながら浮かべる含み笑いは、まんま渚。




「奥にソファあるから二人ともかけて」




言われるがままソファに腰掛けると渚が俺の服の袖を引いて言った。




「付き合ってくれてありがとう」



聞き慣れないくすぐったい言葉。

普段見ることのない落ち着きのない渚の様子。


不安が滲み出たそれらは、訳も分からずここに居る俺に一緒に来て良かったと強い確信を与えてくれた。

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