第49話
「とりあえず中で落ち着いて話そう」
宥めるように兄ちゃんが囁きかけると、その言葉に冷静さを取り戻した渚は涙を拭って頷きを返す。
「よければ彼も一緒に」
その言葉は渚に向けられたものだったけど。
目線は明らかに俺に向けられていた。
目力が半端ない。
俺を捉えて離してくれない。
それでも何となく親近感が湧くのは渚とそっくりな目のせいだ。
自然と下がった目尻がやけに優しかった。
今日はさすがにこれ以上踏み込める気がしない。
そこまで空気読めない奴にはなりたくねえし。
「いや、自分はまた後で迎えにきます」
渚に電話するよう伝えると、縋るような瞳を返される。
「一緒に来てよ」
「俺明らか場違い」
「それでも来て」
俺の意思はお構いなしかコノ野郎。
気まずくてしゃーないわ。
お断りモードだったはずなのに、渚の横で笑顔で頷く渚兄に押される。
「渚もこう言ってるし」
潮風が似合いそうな爽やかな表情。
おまけにスーツをピシッと着こなし、背は俺より高い。
兄貴のせいで渚が男を見る目は肥えてるって香澄が言ってた意味をようやく理解した。
「いや……俺は、」
断れ俺。
適当に言って取りあえず逃れろ。
行っても気まずいだけだ。
何話せばいいのか分かんねえし。
それなのに。
「譲、お願い……」
シャツの袖を引かれ、縋るように言われたら俺の意思なんて関係なくなる。
振りほどけるわけがない。負けた。
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