第44話
私とは対照的に戸惑いを見せず距離を縮めた兄は俯く私の顔を遠慮がちに覗く。
「俺のこと恨んでるよな……、色々ごめんな」
撫でるように頭に添えられた手は小さい頃と同じ。
大きく、頼り甲斐のある手。
懐かしい温もりに、零れないようにと耐えていた涙は限界だとでも言うようにボロボロと地面に零れ落ち。
息苦しいほどに言葉にならない吐息が漏れた。
「――なぎさ」
まるで子供を手なずけるようにガシガシ頭を撫でまわされ、記憶と今が交差する。
「久しぶりだな」
そして次第に記憶の中のあの頃にトリップしていて、固く閉じていた心が緩む。
シャボン玉が弾けるようにあっさり簡単に。
「―――っ」
「淋しい想いさせてごめんな、」
「どこに居たのよっ、おにいちゃん――…」
腕に絡み付く私の髪をくしゃっと撫でて、低い笑い声で応える。
お兄ちゃん。
久しぶりにその言葉を口にした瞬間、心の奥深く凍りついていた想いが容赦なく込み上げた。
「ずっと、ずっと逢いたかった。お兄ちゃんに逢いたかったのっ―――…。でも探せなくて、」
「分かってる。俺もずっと気になってたから、」
不安なんて頭から抜け落ちてた。
今目の前にあることに必死で、夢や記憶の中とは違う本物のお兄ちゃんにしがみ付いて。
空白の年月に重ねた想いをぶつける様に声を上げていた。
本当は中学生だったあの頃と変わらない。
お酒を飲んで、何でも欲しい物を買って。
どれだけ大人と同じように振舞っていても。
家族がバラバラになった寂しさは引きずったまま。
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