第43話

「おいっ!シャンとしろ!」



呆然と立ち尽くす私をを諭すように、呼び戻すドスの利いた声が意識の外から強く刺激してくる。



「ぼんやりしてんな」



一喝され隣を見上げると、力強く見つめられる。



「お前が大好きな兄ちゃんじゃねえのかよ。何ビビってんだよ」



絡まりあっていた指は放たれ、考える隙を与えないように背中に添えられた譲の手。



繋いだ手が離れた瞬間。

不安が何倍にも膨れ上がって、怖くて、今にも泣きそうで。


唇を噛み締めて助けを求める私に譲は言ってくれた。


大丈夫だからって―――。



背中に添えた手に力を籠めて私を一歩前に押し出す。



「ほら行けって」



反動でふらりと数歩進んだものの気持ちが定まらない。


逃げ出したいぐらい居心地が悪い。



前にはお兄ちゃん、後ろからは譲。


二人の視線に困惑して俯いたまま口を閉ざしてしまった。




過去と現在を上手く消化出来ずに心を乱し。

沈黙の中、ビルの合間をぬった風が頬を叩く。




ドラマでもない夢でもない。

今ここにある現実。



でも私は溶け込めない。

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