第43話
「おいっ!シャンとしろ!」
呆然と立ち尽くす私をを諭すように、呼び戻すドスの利いた声が意識の外から強く刺激してくる。
「ぼんやりしてんな」
一喝され隣を見上げると、力強く見つめられる。
「お前が大好きな兄ちゃんじゃねえのかよ。何ビビってんだよ」
絡まりあっていた指は放たれ、考える隙を与えないように背中に添えられた譲の手。
繋いだ手が離れた瞬間。
不安が何倍にも膨れ上がって、怖くて、今にも泣きそうで。
唇を噛み締めて助けを求める私に譲は言ってくれた。
大丈夫だからって―――。
背中に添えた手に力を籠めて私を一歩前に押し出す。
「ほら行けって」
反動でふらりと数歩進んだものの気持ちが定まらない。
逃げ出したいぐらい居心地が悪い。
前にはお兄ちゃん、後ろからは譲。
二人の視線に困惑して俯いたまま口を閉ざしてしまった。
過去と現在を上手く消化出来ずに心を乱し。
沈黙の中、ビルの合間をぬった風が頬を叩く。
ドラマでもない夢でもない。
今ここにある現実。
でも私は溶け込めない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます