第42話

近くなる気配。


恐る恐る振り向けば、そこには懐かしい笑顔があった。



車の後部座席のドアが大きく開きっぱなし。

慌てて追いかけてくれた様子が窺えて更に震えた。


横を通り過ぎた一瞬で自分に気づいてくれた。

ジッと兄を見つめると胸が熱くなった。



私の記憶の中よりずっと大人になっていて。

ビジネススーツを着こなし、髪も整えられていた。




「なぎさ――、だよな?」




再会を懐かしむように笑いかけるその顔は、ずっと夢で描いてた再会シーンなんか比べ物にならなかった。



温かくて柔らかい。

リアルな笑顔だった。



顔を見たいのに溢れた涙が視界を妨げる。

「お兄ちゃん」って呼びたいのに、胸が痞えて声を絞り出せない。



少しずつ距離が近づく度に胸がざわつき。

足が全く動かなくて自らは一歩も歩み寄れない。



「元気だったか?」



確かめるように返事を求める。




何て言えばいい?

何を話せばいい?



頭の中が真っ白になって立ち尽くしていた。

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