第38話

「行こうか」



さっきまで一緒になってケラケラ笑っていた譲は、目を見開いて私の表情を窺う。



「いいのか?いつでも付き合うけど粘りたいなら、」


「大丈夫。何度でも来るから」


「そっか」 


「また一緒に来てくれる?」


「ああ。次こそは会えんだろ」



どうしようもなく追い詰められそうでギリギリだった私を、譲の理由なき自信が救ってくれる。


不安に沈みそうで、一人ではどうしようもない時。

俺はここだって、お前の傍に居るって、全身全霊で伝えてくれる。




「うっしゃっ!行くかっ」



差し出された手に、勢いよく手を重ねるとパシッと音が鳴る。


瞳がかち合って、二人して意味も無く口を大きく笑っていた。



「コヒー買ってから車戻ろうぜ」


「いいね」



敷地を出てすぐのところにあるコーヒーショップを目指してホテルに背を向けると強い向かい風。

思わずギュッと目を閉じ、隣の譲は頭についていたサングラスを手早く引き下げた。



「風きっついな」


「嵐の前触れ?」



譲に肩を抱かれて歩き出した時だった。


向かい風とぶつかり合いながら、風の音に掻き消されそうなほど微かな声が耳に引っかかる。

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