第24話

「お兄ちゃんが居なくなって親も家から遠のいて、これ以上失いたくないと思える物がなかったんだよね。でも今は違う。失うことへの不安がちゃんとある。譲には感謝してるの。だから自分が間違ってたなんて思わないで」



クラシックを聞いているように耳が心地よくて。

不本意だけど泣けた。


穏やかに語る表情が愛おしい。

こいつを守ってやりたいって細胞が騒いでいた。



「これ以上は何も失わせねえよ」



言葉の代わり蕾のような微笑みが返される。


薄っぺらい言葉で治めない。

渚らしいと思った。




「一つ約束してほしい」


「約束?」


「もしもの話。何かあった時は私を切り捨てられる男でいてほしい」


「なんだよそのもしも話」



理解し難い言葉に眉間のシワが強く反発したけど、渚を見ると俺以上に眉を寄せていて、異様な空気感に戸惑いしかない。



「何かって例えば?」


「――わかんないけど。仕事のこととか色々あるんじゃないの」


「ないね。どこぞのお堅いアイドルじゃあるまいし、それはない」


「だから例え話だってば!ほんっと頭固いよね」




飛んできたクッションが顔を直撃。

反撃に出ようとクッションを掴んだものの、手を叩いて喜ぶ姿が無邪気すぎて手放した。

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