第6話

全国ツアーの初日が近づき、譲はここのところ忙しそうにしている。


家でも時間さえあればパソコンを弄って楽曲編集してるし、クラブで飲んで騒いでしてる時とはまた違う一面を垣間見た。



こんな真面目に仕事をしていても一世とは相変わらずの距離感らしい。

必要最低限しか話してないって言ってた。



周りに気遣わせないように振る舞う一世の性だろうなと思う。

そういうところ譲とは違って大人だし器用だなって感心させられる。



「チケットとっとくけど何枚いる?香澄の分と渡瀬さん?」


「え、私行かないよ」


「はっ?!お前冗談キツイ!!」



冗談なわけないし。

そんな腹の底から声を出されても、こっちがビックリだっての。



図書館で借りてきた本に目を這わせていると、背後から手が伸びてきて有無を言わさず取りあげられた。


ジャイアンぶりは相変わらず健在だ。



「来いよ。地方まで来いとか一緒に全国まわれとか難しいこと言ってねえだろ」


「………」



全国回るとか問題外だし。

大学生舐めんなよ。


大体ツアーについてって私にどんな楽しみがあるのか全く読めない。



「来るよな?」


「本返してよ」


「じゃあ来る?」


「考えとく」




譲といるとフェアな会話が全く出来ない。

それに気づいてないあたりこの男の凄いところだ。

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