ネコの私

@sakanatus1

ネコの私

ネコの私


私はネコ、飼い猫だ。


「結婚しようよ!」

ある日、飼い主にプロポーズされた。

私には、何言ってるかわからない。

彼女は若くオタクで、常に何かの妄想をしている。


彼女が私を撫でようとしてくる。

私は撫でる手を甘がみした。

「もう、厳しいんだから」

なぜか、照れている。

私は反応して、噛みたいだけだ。


さわられても、彼女には、なれてない部分がある。それが私のナワバリだ。

そう、主張しても、彼女はじゃれてくる。

「かわいい、かわいい!」

何度も抱きしめに来ようとする。

私は求めてないから、抵抗する。


抱き抱えられても、足をバタバタさせる。


「もう、せわしない!」

必死の抵抗で自由になった。

しぶしぶ、彼女は私を放した。でも諦めない。

スキあらば、じゃれついてくる。


「結婚しよう」

また言ってくる。そして不適な笑み。


私を飼う時にアレを切ッたのにな。

忘れているのか、とぼけているのかと

機嫌が悪くなったのか、私は、シッポを地面に叩きつける。感情表現だ。

ツメも伸びているので、研ぐための板に引っ掻くことにした。


ガリガリガリ。


音をたてていく。

それでも、気がおさまらない。

夢中になるあまり、家の壁をひっかいて行く。

無性に楽しい。


「キルア!」

しかし、飼い主に見つかった。

怒っている。

私の首根っこがつかまれて、やめさせられる。

「何でしたの?」

説教が始まる。延々と言われる。

怒鳴り声も含む。


愛玩動物は飼い主を楽しませないとならないらしい。人間の世界では、アレのない人間は王妃の世話をしてたらしい。


飼い主よ、俺に仕事をくれと言いたい。

ネズミや虫を駆逐することはできる。


「ニャー」

「アンタは、本当に反省してんの?」

啼いて言葉をいっても、飼い主には伝わらないようだ。

飼い主の説教、気づけば耳の空になっていた。


私はネコとしての野生を思いめぐらす。

説教の後、飼い主にツメを切られることになった。手足を出させられて、交互に切っていく。

「やれやれだ」


パチン! パチン! パチン!

爪切りの乾いた音。

捕まえられた状態で切っている。

とにかく自由がない。暴れたい。


「ほら、我慢するの! もう少し頑張ろうね!」

飼い主の機嫌は悪そうだが、淡々と仕事をこなす。

数分後、私は解放される。

やっと、爪切りが終わる。

せっかく伸びてたのに、残念だ。

グゥ。グゥー。

気づけば、腹が減った。

しばらくの時間が過ぎた。


「ニャー、ニャー」

私は、エサよこせと、飼い主に催促する。

「キールーアーくん、あーそーぼー!」

飼い主は、私の要求とは別に、じゃれついてきた。

スッ!

じゃれつきに私は避ける。隠れようとした。


しかし、彼女もしぶとく、私を捕まえた。

「かわいいんだから!」

結局、じゃれつかれた。

息が荒くなる。

「やっぱり、ないわね」

飼い主の彼女は、私の股間をみる。


さっきまで、妄想してたが、アレを切られている事を再確認して、夢から覚めた。

アレのない私には、彼女への夜のお世話は無理なのに。しかし、再び妄想する。


「アレがあったら、良かったのに」

また、現実から妄想へと彼女の思考が飛躍する。

「仕方ないでしょ! そういう約束で飼ったのだから。」

誰かがいった。飼い主の彼女でなく、別の飼い主で、少し年とっているおばさんだ。

「はーい!」


彼女はうなだれながらも返事する。

現実に引き戻された。

その瞬間、私は逃げる。


じゃれつきから自由になった。

「ニャー!」

再び、ご飯を催促する。


「ご飯? もうそんな時間か」

おばさんは、私の声を聞いて、わかってくれた。


私はネコである。

人間の言葉を模倣するが、話しても伝わらない。それらしく響くのみになる。

憂鬱な毎日と憂鬱な日常の中で、生きている。

やれやれだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ネコの私 @sakanatus1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ