第9話 おおうつみ駅
最近、通勤時間はSNSのオカルト動画ばかり見るようになった。
以前たまたま見つけた地元のホラースポットを巡るアカウントだ。
オカルト動画と言えば聞こえはいいが、どちらかと言えばホームビデオのようなクオリティだ。
しかし画面越しに観る風景は知っているようで知らない、繰り返しデジャヴを見るような奇妙で新鮮な感覚でついつい見入ってしまう。
既に結構な数の動画が投稿されており、当初は興味をそそられるタイトルを優先して観ていたものだがいよいよ大きく遡って古い動画から順を追って観るまでになっていた。
聞いたことのある心霊スポットから、まさか心霊スポットとして扱われていたなんてと思うようななじみの場所への訪問等、拙い編集でまとめられたものばかりだった。
動画の本数を経るにつれ、段々と進行の手際や編集の精度が上がっていき、それらを見比べるのも楽しみの一つになっていた。
そんなこんなで動画を観ていると、かつて訪れたほくごう駅が現れた。
確かにあそこには花が手向けられていた。たしかに曰く付きと言えば曰く付きではあるが、いささか不謹慎ではと思いつつも私は動画を止めることは無かった。
ほくごう駅の周辺をカメラに収め、その地域の蘊蓄を語り、いよいよ無人の構内へと移動していく。
構内をぐるりとカメラが回る。
私はあの献花を思い出し、画面を凝視した。
が、あの場所には何も無かった。
ただのベンチが映るばかりだった。
事が起きる前に撮られたものかと肩透かしを食らった気持になり、自分もまた不謹慎を望んいたのかもしれないと少しだけ自己嫌悪になった。
しかし、投稿者は口を開いた。
「今回は長丁場になります!なんと、今回の企画は…」
「自分で心霊スポットを作ってみよう、です!」
そう言って投稿者は一本の白い花をそっとベンチに置いた。
そこから画面が切り替わり、ダイジェストのように「一日目」「二日目」「三日目」と毎日花や缶コーヒーを供え物のように置いてゆく。
一週間程経った頃、変化が訪れた。
供え物が明らかに増えていたのだ。
投稿者がこの一週間で置いていった諸々の他に、未開封のお菓子袋や玩具・中にはカップ酒もあった。
画面の中ではしゃぐ投稿者であったが、勿論本人の自作自演の可能性もある。
動画は再びダイジェストになり、「十日目」「十一日目」となる頃には私も見覚えがある「あの状態」になっていた。
あの時の私のように、ここで何かがあったと感じた人々がついぞ花を手向けるまでになったのだ。
何もなかったはずの「そこ」に「何か」を見出し、手を合わせ祈るようになったのだ。
確かに「何か」が生まれた瞬間であろう。
私はあの風景の成り立ちに拍子抜けと、少しの苛立ち、そして確かな「面白さ」を感じた。
もうすぐ到着の時間だ。
投稿者は締めの言葉と、この動画が前後編だと言うことを告げる。
帰りの時間が少しだけ楽しみになった。
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