第8話 あおがしま駅
最寄り駅と職場がある駅までのちょうど中間に位置する本駅だが、ここは非常に賑わっている。
海水浴場や屋外アクティビティ等の自然を生かしたアミューズメントや海に面した宿泊施設も多く設置され国内外問わず観光客が訪れる場所になっている。
私の通勤時間、即ち早朝にも関わらず浮かれた格好の乗客はみな決まってここで降りていく。
彼ら彼女らを見送りながら、空の青さにため息をついたものだ。
もう一つ、ここには有名な観光スポットがある。
少し離れた小島を、海を渡る橋で繋いだ四方を海に囲まれた中々に珍しい神社だ。
かつては歴史上の超有名人が新婚旅行に訪れたという謂れもあり、縁結びとして名高く一年を通して参拝客で盛況しているものだ。
私も何度か訪れたことがあるが、ここには一風変わった願掛けがある。
粘土で焼いた円盤を投げ、その落下地点や割れ方で吉凶を占うという。
遊戯性のあるこの願掛けはいつ来ても列をなしていて、それだけでここの人気がうかがい知れるというものだ。
しかしながら、観光客は勿論のこと地元民も存外名物・名所を知らなかったりするものである。
観光地で売ってあるお土産なんかも、存在を知りつつ口にしたことは無いというアレだ。
こんなに由緒ある場所に住んでいるのに、何も知らないなんて勿体ない。と思ったわけではないが、更に言うと私が実際に住んでいる場所からしてみればここも十分遠いところではあるが、ふとこの神社の由来や来歴なんてものを調べてみることにした。
職場につくまでの暇つぶしだ、手元には文明の利器もある。
私はインターネットを活用し、いとも容易くその情報にたどり着いた。
出てきた情報に、私は少しだけ驚いた。
元々ここは、旅、ひいては航海の安全を司る神様を祀っているとのことだった。
なるほどどうして、海の中にある神社だけのことはある。
かの歴史の偉人も、海にまつわる大事を成した人物だ。
講釈を読むほどに膝を打ちたくなってくる。
一通り目を通して、窓から海を見る。
きっと神社には祀る神様やご利益・由緒なんてのはご丁寧に明記してあるに違いない。
だが人は難しそうな・面倒そうなことからは目を逸らして、見たいものだけを見るのだろう。
自分もそうだったように。
かつての偉人がわざわざ新婚旅行に来た。新婚旅行というくらいだから縁結びに決まっている。そう信じることにした。
楽しそうに粘土の円盤を投げるカップル達に、それを告げるのは無粋だろう。
「本質を見失う」なんて言葉があるが、本質が変容することもあるのだろうか。
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